鏡の家 (Kagami no Ie – Ngôi Nhà Gương)
[Hồi 1 – Phần 1] 私の仕事場は、木の匂いがする。 乾いたヒノキの香り、 少し甘いケヤキの香り。 そして、研ぎたての刃物が放つ、冷たい鉄の匂い。 私は黒川春樹。五〇歳。 指物(さしもの)師として生きている。 釘を使わず、木と木を組み合わせて家具や調度品を作る、古くからの職人だ。 仕事場に差し込む西日が、床の鉋屑(かんなくず)を金色に照らしている。 私は息を止めた。 手元にあるのは、複雑な「三方留(さんぽうとめ)」の継手(つぎて)。 寸分の狂いも許されない。 ノミを握る手に、全神経を集中させる。 コン、と乾いた小さな音。 木槌(きづち)がノミの柄を叩く。 サク、サク、と刃先が木肌を削る音だけが、静寂に響く。…