Lăng Mộ Ở Biển Chết
Hồi 1 – Phần 1. 死海の水面は、午後二時の太陽の下で、まるで硫酸のように白く輝いていた。この塩分濃度の高い湖は、命を拒絶する場所であり、全てを保存する巨大な防腐剤の役割を果たしている。二〇二九年、カイトはまさにその底、泥と塩の層の下に、過去か未来か判別できない何かの痕跡を見つけようとしていた。 カイト、本名・海人(かいと)は、四〇歳を迎えたばかりだが、その表情には五年前に失った妻、アキの死が深く刻み込まれていた。彼はもはや古代の生物学者というよりも、贖罪を求める影のようだった。妻は、彼の禁止されていた研究、つまり時間遺伝子学の初期理論に関わる事故で命を落とした。以来、カイトは自分が生き残ったことの意味を問うていた。 「カイト博士、深度八五メートル。泥の層を突破しました。反応は前回と同じ、非有機物、しかしこれまで知られているいかなる金属とも違う構造です」 無線からレナの冷静な声が響いた。レナは三五歳、彼のチームのAIと宇宙工学の専門家であり、常に理論と数字に忠実な女性だった。彼女の視線は、カイトの持つ古代への情熱とは対極にある、冷たい星空に向けられていた。 「構造の形状は?」カイトはマイクに問いかけた。彼の声は低いが、その底には微かな興奮が宿っている。死海での探索は三ヶ月に及び、この「何か」のせいで、彼の資金は底をつき始めていた。 「幾何学的な異常性を示しています。非常に大きな、均一な長方形。まるで巨大な…箱、あるいは聖櫃(せいひつ)です」 聖櫃。レナは技術用語の代わりに、意図的にこの言葉を選んだ。彼女自身は懐疑的だったが、この物体から発せられる微弱なシグナルが、彼女が二〇二四年に追跡していた異常な衛星信号「ヌル・ヘックス(Null Hex)」と完全に一致していたからだ。 「サトウさん、準備は?」 カイトが尋ねると、ベテランのダイビング・エキスパート、サトウが隣で頷いた。サトウは五五歳で、元海軍の屈強な男だ。彼は科学的な説明よりも、自分の直感と水の流れを信じる。サトウは装備をチェックしながら、いつもの低い声で言った。 「いつでもいけます。ただし博士、泥の下で五年間眠っていたものを起こすのは、良いアイディアじゃないことが多い」 「我々はそれを起こすのではなく、理解しようとしているだけだ、サトウさん」カイトはそう返したが、サトウの言葉は彼の心に小さな波紋を広げた。アキの事故も、まさに「起こしてはならないもの」を起こした結果だった。 レナからの最後のデータ送信が届く。それは、泥の中から露出した構造物の一部の画像だった。真っ黒な泥の中に、完璧に透明なガラスのような物質が埋まっている。その透明度は異常だった。数千年の泥の中でも、その表面には傷一つないように見える。 「素材分析によると、これは二酸化ケイ素をベースにした結晶構造ですが、その分子配列は地球上では不可能です。製造には、超高圧と特定の量子振動が必要です。これは、古代の技術ではありません、カイト博士」 レナの声が緊張感を帯びた。古代のものだと思っていたカイトの仮説が、ここで揺らぎ始めた。もしこれが古代の遺物ではないなら、なぜ五年前、衛星がこれを「探知」した?いや、レナが言うように、なぜ二〇二四年から衛星がこれを「見つけてくれ」と信号を送り続けていたのか?…