【全編】玉座の薫煙。嘘(うそ)を見抜く「鼻」を持った女官は、すべてを知り、北の果てへ追放された【オーディオドラマ・睡眠用】(Dịch nghĩa: [Toàn bộ] Khói Trầm Trong Ngai Vàng. Nữ quan sở hữu “chiếc mũi” nhìn thấu sự dối trá, biết được tất cả, và bị đày đến tận cùng phương Bắc [Audio Drama・Dùng khi ngủ])
私の世界は、音ではなく、匂いで満たされている。 朝、目覚めを告げるのは、鶏の声ではない。 湿った苔と、夜露に濡れた土の匂い。 それが、御香所(ごこうしょ)の古い木の柱を伝って、私の狭い寝床まで届くのだ。 私は伽夜(かや)。 今年で十九になる。 この広大で、複雑な宮中で、私の存在は煙のように淡い。 誰の目にも留まらない。 それが、私の役目であり、私の守りでもあった。 私の仕事場である御香所は、宮中の片隅、北の塀に近い場所にある。 陽光はあまり届かないが、一日中、静かな香りが満ちている。 ここは、宮中のすべての儀式、すべての生活を支える「香り」を生み出す場所。 陛下の御衣(おんぞ)に焚きしめる名香。 祭祀で焚かれる浄めの乳香。 そして、高位の女房たちが競うように調合する、秘伝の練香。 そのすべてが、この薄暗い土間で生まれる。 私は、まだ下働きだ。 主な仕事は、薬研(やげん)で香木を挽くこと、炭の火加減を見ること、そして、高価な香料が納められた棚の掃除。 私の顔は、たぶん、誰の記憶にも残らない。 着ている小袖も、洗いすぎて白茶けた麻の色。…