Mộ Thuyền Pharaon
🟢 Hồi 1 – Phần 1 十年前のあの日、妹の冷たい手が、僕の全てを変えてしまった。あれはただの事故じゃなかった。学術調査隊がエジプトの砂漠で発見した、古代の船の墓。そこに保管されていた青い液体が、僕のたった一人の家族を奪った。研究チームは「原因不明の有機毒性物質」として片付けたが、僕は知っている。妹は死の間際、「舟、星…」と、ただ二つの単語を呟いただけだった。その日から、僕の人生は「真実を暴く」という、果てしない探索旅行になった。僕の名前は高木蓮、三十五歳。考古学者だと言われているが、真実は、十年前の青い液体に囚われた亡霊だ。 現在の僕の机の上には、太陽の熱で焦げ付いた、羊皮紙の断片が広げられている。これは、妹の日記の最後のページに隠されていたものだ。そこには、三千年以上前のファラオの船の墓、それも普通の埋葬船ではなく、**「夜明けの星を運ぶ舟」**の座標が、古代文字と奇妙な記号で記されていた。この情報を元に、僕は非公開の、名もない団体から莫大な研究資金を引き出した。彼らは技術的なデータだけを欲しがっている。彼らにとって、これは単なる未確認技術の回収プロジェクトだ。僕にとっては、妹の魂が辿り着いた場所への、片道切符だ。 調査チームは僕を含めて三名。まず、分子生物学者である佐倉梓。彼女は僕の元恋人であり、今は僕の最も厳格な監視者だ。彼女は常に冷静で、感情よりもデータとロジックを優先する。「蓮、感情で科学を歪曲しないで。あなたの論文は素晴らしいわ。だからこそ、あの事故に利用されないで」彼女の瞳はいつも僕にそう語りかけている。僕が今回の調査に彼女を誘ったのは、彼女の類稀な分析能力が必要だったからだ。そして何より、彼女が僕の暴走を止める唯一の錨だと知っていたからだ。彼女だけが、僕がまだ人間であることを思い出させてくれる。 三人目は、地元の砂漠専門家、ムスタファ・ハキム。五十歳。深く刻まれた皺と、すべてを見通すような眼差しを持つ男だ。彼は、この土地の伝説や禁忌について、誰よりも詳しい。「蓮様、この砂漠は、時々、生き物を拒むのです。古代の王は、触れてはいけないものを知っていた」彼はそう言って、僕の行動一つ一つに、静かに警告を発する。ムスタファは科学よりも信仰を重んじている。彼にとって、僕たちが探しているものは、財宝ではなく、封印なのだ。 僕たちはルクソール近郊の立ち入り禁止区域、灼熱の砂丘の奥深くへと向かっていた。GPSはおかしなノイズを発し、衛星写真でも白い斑点にしか見えない場所だ。僕が目指すのは、ただ一つの岩山、その影に隠された「夜明けの星を運ぶ舟」の墓だ。 夜明け前、目的地に到着した。気温はすでに肌を焦がすほどだ。ムスタファが顔全体を覆う布を固く結びながら言った。「ここから先は、神々の沈黙の領域です。過去に、ここに入った者は、皆、迷い、そして…消えた」。彼の声には、本物の畏れが滲んでいた。しかし、僕の胸には畏れよりも、十年間の渇望が満ちていた。 僕は持参した地中レーダーを起動させた。機器はすぐに、岩山の真下、深さ約五十メートルに、巨大な空洞、人工的な構造物が埋まっていることを示した。形状は、まさに古代エジプトの船型墓。しかし、一般的なものより遥かに巨大で、そして、材質が違う。花崗岩ではなく、未知の合金のような強い反射波を返していた。僕の心臓は激しく鼓動した。これは、妹が命を懸けて発見したものの、その始まりに過ぎない。 「アズサ、確認してくれ。この信号は、僕が探していたものだ」僕は興奮気味に言った。 梓は冷静にタブレットを操作し、データを解析した。「反応は強烈ね。確かに通常の石棺ではない。ただ、蓮、なぜこの墓はこれほど深く、そして厳重に隠されているの?これは王墓というよりも…保管庫のように見えるわ」。彼女の言葉は、いつも的確に核心を突く。保管庫。何かを隠すのではなく、守るために。 僕たちは狭い縦穴を掘り進め、爆薬で岩盤を割る。数時間の作業の末、ついに、地下深くの空間に到達した。僕が最初に入った。空気は重く、そして静寂に満ちていた。照明を点けると、僕の息は止まった。目の前に広がるのは、三千年の時を超えて、完璧な状態で残された**「舟」**だった。それは巨大で、木材ではなく、黒曜石のような光沢を放つ素材で作られていた。船体には、見たこともない複雑な天文学的記号が、青白い光を放ちながら刻まれていた。 船の中央には、奇妙な形をした**「棺」**が置かれていた。それは石ではなく、透明な、厚いガラスのような物質でできていた。光を当てると、棺全体が鈍い青色に輝いた。そして、その中に、僕の全ての疑問と渇望の源がある。 「蓮…これは…」梓は絶句していた。 僕はガラスの棺に顔を近づけた。中には、布に包まれた、一つのミイラが横たわっていた。しかし、その布の一部が裂けている。ミイラの顔が、僕の視界に入った。僕の血管を、冷たい電流が走った。 それは、確かに、人間ではない。…