(XONG (9)Phòng Trọ Cũ Cuối Phố (巷裏の古いアパート)

HỒI 1 – PHẦN 1

私は佐藤由美(さとう ゆみ)。45歳。 世間では、成功した陶芸家と呼ばれています。 私の作品は、光の入り方が計算されたギャラリーに並び、 裕福な人々の家を飾る。 その私が、今、立っているのは、 日の当たらない、六畳一間です。

「巷裏荘(こうりそう)」。 名前だけは、少し風情がある。 けれど現実は、 昭和の時代から取り残されたような、古い木造アパート。 外階段を上るたびに、鉄板が悲鳴のような音を立てる。

今日、私は離婚しました。 夫、健二(けんじ)とは、20年連れ添いました。 彼は、私の成功を誰よりも喜んでくれた、はずだった。 いつからだろう。 私たちが、食卓で目を合わせなくなったのは。 私が新しい作品の構想に没頭する間、 彼は、どんな顔で窓の外を見ていたんだろう。

「これで、お互い自由だ」 弁護士の前で、彼はそう言いました。 その声は、乾いていて、 何の感情も読み取れなかった。 私も、うなずくだけでした。

高級マンションの、がらんとした部屋。 私は、自分の荷物をまとめました。 といっても、本当にわずかなもの。 仕事道具は、すべて工房に置いてきた。 服も、アクセサリーも、 「陶芸家・佐藤由美」を彩る道具だった気がして、 ほとんどを処分しました。

ただ一つ、 どうしても捨てられないものがありました。 学生時代に作った、 縁の欠けたマグカップ。 私が初めて、土と火で生み出した「形」。 ひび割れた釉薬(ゆうやく)の隙間に、 あの頃の情熱と、未熟さが詰まっている。

健二は、このカップが好きでした。 「不安定なところが、いい。完璧じゃないところが、お前らしい」 毎朝、これでインスタントコーヒーを飲んでいた。 私の、何十万円もする茶碗ではなく。 この、欠けたカップで。 私はそれを、ボストンバッグの奥にしまい込みました。

アパートの部屋。 「103号室」 鍵は、古めかしいシリンダー錠。 ドアを開けると、 湿気と、古い畳の匂いが、鼻をつきました。 一瞬、息が詰まる。 これが、私の新しい「城」。

窓は一つ。 開けても、隣のビルの壁が迫っている。 太陽は、この部屋を知らないかのようでした。 小さな流し台。 蛇口をひねると、錆(さび)の混じった水が少し出た。 すぐに透明になったけれど。 一口のガスコンロ。 その隣に、小さな冷蔵庫を置くスペースがあるだけ。 シャワーとトイレは、共同。

なぜ、こんな場所を選んだのか。 私を哀れんだ友人は、 もっとマシなマンションを、と勧めてくれた。 実家の両親は、 「世間体がある」と泣いていた。 でも、私はここが良かった。

これは、私なりの「リハビリ」なのかもしれない。 あまりにも清潔で、 あまりにも静かで、 あまりにも完璧だった、あの生活からの。 あの家では、 私の息遣いだけが、やけに大きく響いていた。 健二の沈黙が、 広いリビングに、重く積もっていくようだった。

私は、荷解きを始めました。 段ボールは、三つだけ。 着替え。 洗面用具。 そして、数冊の本。 あっという間に、終わってしまった。 六畳の部屋が、 それでも、がらんとしている。

バッグから、例のマグカップを取り出しました。 それを、 黄ばんだプラスチックの、小さなテーブルの上に置く。 カタン、と乾いた音がしました。 この部屋で、 私が発した、最初の音。 そのカップだけが、 私の「過去」と「今」を繋ぐ、 唯一の証(あかし)のようでした。

夜になりました。 電灯の紐を引く。 裸電球が、 ぼんやりと、オレンジ色の光を放つ。 部屋の隅々に、 自分の影が、濃く落ちる。

壁が、薄い。 信じられないくらい、薄い。 隣の部屋。 たぶん、「102号室」。 夫婦らしき男女の、話し声が聞こえる。 「今日は、から揚げよ」 「おお、やった!」 そんな、ささやかな会話。 油の跳ねる音。 換気扇の回る音。

上の階、「203号室」。 小さな子供が、 ドタドタと走り回る音。 母親が、 「こら!静かにしなさい!」 と叱る声。 でも、その声には、 疲れよりも、愛情がこもっているのが分かる。

生活の音。 他人の、 濃密な、 むき出しの生活の音。

あのマンションでは、 こんな音は、一切しなかった。 すべてが、分厚いコンクリートに遮断されていた。 私たちは、 お互いの生活の音さえ、 聞かないように暮らしていたのかもしれない。

私は、 その「音」たちに、 じっと耳を澄ませていました。 うるさい、とは思わなかった。 むしろ、 その音たちが、 この部屋の冷たい空気を、 少しだけ、温めてくれているような気がした。

とはいえ、 孤独であることに、変わりはありません。 私は、ひとりになった。 この、見知らぬ街の、 古いアパートの一室で。 成功も、 名声も、 そして、 夫も。 すべて、 あの「完璧な」工房と、 あの「静かな」マンションに、 置いてきてしまった。

お腹が、 ぐう、と鳴りました。 そういえば、 朝から何も食べていない。 弁護士事務所で飲んだ、 味のしないお茶だけ。 私は、立ち上がりました。 財布と鍵だけを持って、 ギシギシと鳴る階段を、 そっと降りていきました。

アパートの角を曲がると、 小さな商店街がありました。 八百屋。 魚屋。 豆腐屋。 ほとんどの店が、 もうシャッターを下ろしている。 その中で、 一軒だけ、 煌々と明かりがついている店がありました。 「深夜営業」と書かれた、 小さなスーパーマーケット。

私は、 吸い寄せられるように、 その中に入りました。 客は、私一人。 店員が、 やる気のない声で、 「いらっしゃいませ」 と言った。

私は、何を買えばいいのか、 分かりませんでした。 あの家では、 食事は、ほとんど外食か、 家政婦さんが作った、 栄養バランスの整った料理だったから。 自分で、 「今夜、食べるもの」 を選ぶのは、 何年ぶりのことだろう。

棚を、うろうろと歩き回る。 そして、 一つの商品に、 目が留まりました。 インスタントの、 カップラーメン。 一番安い、 しょうゆ味。

私は、 それを二つ、手に取りました。 なぜ二つだったのか、 自分でも分からない。 無意識の、 習慣だったのかもしれない。 「一人分」 という現実に、 まだ、体が慣れていない。

レジに持って行くと、 店員が、 「お箸、二膳でよろしいですか」 と聞いた。 私は、 一瞬、 言葉に詰まりました。 「…あ、いえ」 「一膳で、 大丈夫です」 「一人、ですから」

自分で言って、 胸が、 ズキン、と痛んだ。 店員は、 怪訝(けげん)な顔もせず、 「ありがとうございました」 と、商品を袋に入れた。 その、 何気ないやり取りが、 今の私には、 刃物のように、 鋭く感じられました。

アパートに戻る。 階段が、 行きよりも、 一層、 ギシギシと鳴るように感じた。

部屋に戻り、 電気ポットでお湯を沸かす。 古い型で、 沸騰するまでに、 やけに時間がかかった。 ゴー、 という、 低い、 うなるような音。 その音が、 私の、 空っぽの、 胃袋に響く。

カップラーメンの、 フィルムを剥がす。 粉末スープを、 麺の上にあける。 お湯を注ぐ。 待つ、 3分。

この3分間が、 永遠のように、 長く感じられました。 私は、 何を しているんだろう。 佐藤由美。 数時間前まで、 高級マンションで、 ブルゴーニュの、 上質なワインを飲んでいた、 私が。 今、 この、 薄暗い部屋で、 カップラーメンの、 出来上がりを、 待っている。

ピピピ、 と、 タイマーが鳴る。 いや、 鳴らない。 タイマーなんて、 この部屋にはないんだった。 私は、 スマートフォンの、 アラームで、 時間を計っていた。

蓋を開ける。 しょうゆの、 人工的な、 でも、 懐かしい匂いが、 湯気と共に立ち上った。 私は、 割り箸を、 パキン、 と割った。

一口、 すする。 熱い。 しょっぱい。 でも、 なぜか、 体の芯まで、 温まるような気がした。 おいしい、 とは違う。 でも、 今、 私の体が、 一番、 欲していた味。 そんな気がした。

私は、 夢中で、 麺をすすりました。 スープも、 一滴残らず、 飲み干した。 額に、 じんわりと、 汗がにじむ。

空になった、 プラスチックの容器。 それを、 ゴミ袋に、 押し込む。 シンクで、 顔を洗い、 歯を磨く。 さっき買った、 安い石鹸と、 歯磨き粉の、 ツン、 とした匂い。

私は、 布団、 と呼ぶには、 あまりにも薄っぺらな、 敷布団の上に、 横になった。 電灯を、 消す。

真っ暗闇。 ではない。 窓の隙間から、 隣のビルの、 非常灯の、 緑色の光が、 差し込んでいる。 天井に、 ぼんやりと、 その光が、 揺れていた。

隣の、 から揚げの匂い。 上の階の、 もう、 寝静まった、 気配。 遠くで、 救急車の、 サイレンの音。 すべてが、 私の、 新しい現実。

不思議と、 あの、 奇妙な「安堵感」は、 まだ、 胸のあたりに、 残っていました。 すべてを失った。 でも、 だからこそ、 もう、 失うものは何もない。 「陶芸家・佐藤由美」 という、 重たい鎧を、 やっと、 脱ぐことができた。 そんな、 解放感。

私は、 この、 古いアパートで、 生きていく。 ただの、 佐藤由美として。 私は、 ゆっくりと、 目を閉じました。 それは、 ここ数年で、 一番、 静かな、 眠りの、 始まりでした。

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HỒI 1 – PHẦN 2

朝、 小鳥のさえずり、 ではなく、 隣の部屋の、 目覚まし時計の音で、 私は目を覚ましました。 続いて、 バタバタという足音。 「遅刻するぞ!」 という、 昨夜の、 から揚げの旦那さんの声。 壁一枚を隔てた、 他人の朝が、 私の朝になりました。

体中が、 痛い。 薄い布団は、 畳の硬さを、 そのまま伝えてきました。 でも、 悪くない目覚めでした。 あの、 完璧に防音されたマンションで、 一人、 静寂の中で目覚める朝より、 ずっと、 「生きている」 感じがしたから。

私は、 ゆっくりと起き上がり、 共同の洗面所に向かいました。 冷たい水が、 顔を、 シャキッとさせます。 鏡に映る自分は、 少し、 寝癖がついている。 髪を、 手ぐしで、 大雑把に整えました。 「陶芸家・佐藤由美」 は、 完璧なヘアメイクが必要だった。 でも、 今の私には、 この、 寝癖のついた自分で、 十分でした。

部屋に戻り、 昨日買ったインスタントコーヒーを、 あの、 欠けたマグカップに注ぐ。 お湯を沸かす、 あの、 うなるような音も、 二日目には、 もう耳に馴染んでいました。

一口、 すする。 苦くて、 薄っぺらな味。 でも、 その苦さが、 今の私には、 ちょうど良かった。 私は、 そのカップを、 片手に、 窓辺に立ちました。 窓を開けても、 見えるのは、 コンクリートの壁。 でも、 その壁に、 朝の光が、 ほんの少しだけ、 反射していました。 「ああ、 今日も、 世の中は、 動いているんだな」 と、 当たり前のことを、 実感しました。

今日は、 この部屋を、 少し、 「自分の場所」 にしよう、 と決めました。 まずは、 掃除から。 それから、 簡単な、 調理道具を、 揃えよう。 毎日、 カップラーメン、 というわけには、 いかないから。

私は、 再び、 あの、 古い商店街に、 向かいました。 朝の商店街は、 昨夜とは、 全く違う、 活気に満ちていました。 八百屋の店先には、 泥のついた、 新鮮な野菜が並んでいる。 魚屋は、 威勢のいい声で、 「今日は、 アジがいいよ!」 と叫んでいる。 豆腐屋からは、 ラッパの音が、 鳴り響いている。

私は、 その、 エネルギッシュな空気の中に、 少し、 気圧(けお)されました。 いつも、 私が買い物をしていたのは、 BGMの流れる、 静かな、 オーガニック専門の、 スーパーマーケットだったから。 そこでは、 野菜は、 きれいに洗われ、 パック詰めされていた。

私は、 おそるおそる、 八百屋の店先に立ちました。 「あの… その、 大根を、 一本、 ください」 「はいよ! お姉さん、 葉っぱは、 どうする? 炒めると、 うまいよ!」 店主の、 日に焼けた笑顔。 私は、 一瞬、 戸惑いました。 「あ、 じゃあ、 お願いします」 「まいどあり!」 新聞紙に、 無造”作に、 くるまれた大根。 ずっしりと、 重い。 命の、 重さ。 そんな気がしました。

私は、 その後、 小さな鍋と、 フライパン、 それから、 お米を、 5キロ、 買いました。 帰り道、 両腕が、 ちぎれそうなくらい、 痛かった。 でも、 その痛さが、 なんだか、 嬉しかった。 自分で、 「生きるためのもの」 を、 手に入れた、 という、 実感。

アパートに、 戻る。 階段を上るのが、 昨日より、 少し、 楽になった気がしました。 ギシギシ、 という音も、 「おかえり」 と、 言ってくれているように、 聞こえなくもない。

部屋に、 荷物を置く。 六畳の部屋に、 大根と、 米袋と、 鍋。 なんだか、 急に、 生活感が、 溢れ出しました。 私は、 買ってきた、 安いスポンジに、 洗剤をつけて、 流し台を、 磨き始めました。

キュッ、 キュッ、 という、 摩擦音。 古い、 ステンレスの、 くすみが、 少しずつ、 取れていく。 それから、 ガスコンロ。 床。 窓。 私は、 無心になって、 体を動かしました。 汗が、 頬を伝う。 あの、 工房で、 土を、 こねている時と、 少し、 似ていました。 無心に、 何かに、 打ち込む。 それは、 私が、 唯一、 自分を、 肯定できる、 時間。

そして、 壁を、 拭いていた、 その時。 私は、 それを見つけました。 部屋の、 ちょうど、 真ん中あたり。 壁紙が、 少し、 浮き上がっている。 そして、 その下に、 一本の、 亀裂(きれつ)が、 走っていました。

長さは、 50センチほど。 誰かが、 それを、 補修しようとした、 跡がありました。 白い、 パテのようなもの。 でも、 その塗り方が、 ひどく、 不器用。 まるで、 子供が、 粘土細工でもしたかのように、 盛り上がって、 固まっている。 そして、 その上から、 元の壁紙とは、 明らかに、 違う色の、 ペンキが、 雑に、 塗られていました。 薄い、 灰色。

それは、 この部屋の、 貧しさ、 と、 古さ、 を、 象徴しているようでした。 私は、 指先で、 そっと、 その、 盛り上がった部分に、 触れてみました。 ザラザラ、 とした、 感触。 でも、 不思議なことに、 その、 不格好な補修跡は、 とても、 頑丈でした。 びくともしない。 誰かが、 必死になって、 この壁を、 支えようとした。 そんな、 意志のようなものを、 感じました。

「みっともないわね」 口では、 そう呟きながらも、 私は、 その亀裂から、 目が離せませんでした。 完璧な、 ギャラリーの、 白い壁とは、 正反対。 でも、 なぜか、 その、 「傷」 と、 「不器用な手当て」 の跡に、 心が、 ザワザワと、 音を立てました。

その時でした。 ポケットに入れていた、 スマートフォンが、 震えました。 画面を見ると、 「春(はる)」 という文字。 息子でした。 私は、 慌てて、 手についた、 埃を、 エプロンで拭い、 通話ボタンを、 押しました。

「もしもし、 春?」 「あ、 母さん? 今、 大丈夫?」 16歳の、 息子。 声変わりした、 低い声。 でも、 その、 響きの中に、 まだ、 幼い頃の、 優しさが、 残っている。 「ええ、 大丈夫よ。 どうしたの?」 「あのさ、 今、 家の、 近くまで来てるんだけど。 寄っても、 いい?」

ドキリ、 としました。 来てくれるのは、 嬉しい。 でも、 この部屋を、 見られるのは、 恥ずかしい。 私の、 ちっぽけな、 プライドが、 顔をもたげました。 「今、 掃除中で、 ぐちゃぐちゃだけど… それでも、 よければ」 「分かった。 じゃあ、 すぐ行く」 電話は、 一方的に、 切れました。 あの子は、 いつも、 ああだ。 父親に、 似て。

私は、 慌てて、 部屋の中を、 見回しました。 ぐちゃぐちゃ、 というか、 がらんどう。 大根と、 米袋が、 やけに、 目立つ。 私は、 それを、 慌てて、 流し台の下に、 押し込みました。 そして、 もう一度、 鏡を見て、 髪を、 整え直す。 何をしているんだろう、 私。 息子に、 見栄を張って、 どうするんだろう。

コン、 コン。 ノックの音。 「開いてるわよ」 ドアが、 ゆっくりと開きました。 そこに、 春が、 立っていました。 制服姿。 私より、 もう、 背が高い。 手には、 小さな、 段ボール箱を、 抱えています。

「お邪魔します」 春は、 そう言って、 狭い、 玄関で、 靴を脱ぎました。 そして、 部屋の中を、 じっと、 見回しました。 私は、 彼の、 視線から、 逃げるように、 目をそらしました。 「汚くて、 ごめんなさいね。 お茶、 …は、 今、 切らしてるわ。 水で、 いい?」 「ううん、 いい。 何も、 いらない」

春は、 そう言うと、 抱えていた、 段ボール箱を、 畳の上に、 置きました。 「これ、 母さんの部屋にあったから。 いるかな、 と思って」 「…何?」 「分からない。 古い写真とか、 なんか、 道具みたいなのとか」

私は、 その箱を、 開ける前に、 息子を、 じっと、 見つめました。 彼は、 何を、 考えているんだろう。 父親と、 母親が、 離婚した。 母親は、 こんな、 みすぼらしい場所に、 引っ越した。 高校生の、 彼には、 重すぎる、 現実。 「春、 ごめんね。 色々と…」 「別に」 春は、 私の言葉を、 遮りました。 「母さんが、 決めたことだろ。 俺は、 何も」

彼は、 再び、 部屋の中を、 見渡しました。 一口の、 ガスコンロ。 黄ばんだ、 テーブル。 そして、 その上に、 ぽつんと、 置かれた、 私の、 欠けたマグカップ。

春の視線が、 そのカップで、 止まりました。 「…これ、 持ってきたんだ」 それは、 質問、 ではありませんでした。 ただの、 確認。 「ええ。 なんとなく… 捨てられなくて」 「ふうん」 春は、 それ以上、 何も言いませんでした。

沈黙が、 落ちる。 狭い部屋に、 気まずい、 空気が、 漂う。 私は、 何か、 言わなくては、 と思いました。 「あの、 学校は、 どう? 部活は…」 「普通だよ」 春は、 短く答えると、 窓の外、 つまり、 コンクリートの壁、 に、 視線を、 向けました。 そして、 ぽつり、 と、 言ったのです。

「母さん」 「なあに?」 「なんで、 ここにしたの? この部屋」 私は、 言葉に、 詰まりました。 「それは… さっきも、 言ったけど、 静かな、 ところがいいなって… 気分を、 変えたかったし」

春は、 ゆっくりと、 私の方を、 振り返りました。 彼の、 黒い瞳は、 まっすぐ、 私を、 射抜いていました。 その目は、 まるで、 私よりも、 ずっと、 年上の、 大人の目のようでした。 「静か、 ね。 でもさ…」 彼は、 何かを、 言いかけて、 口を、 つぐみました。 「…でも?」 「いや…」 春は、 首を、 横に振りました。 「なんでもない。 でも、 変なの」 「何が?」 「だって、 ここ、 なんだか… そっくりなんだよ」 「そっくり? 何に?」 「…ううん。 気のせい、 かも。 じゃあ、 俺、 もう行くよ。 部活、 あるから」

春は、 逃げるように、 立ち上がりました。 「え、 もう? せっかく、 来てくれたのに」 「いいよ。 これ、 届けに来ただけだから」 彼は、 靴を履くと、 一度だけ、 私を、 振り返りました。 「母さん」 「はい」 「無理、 すんなよ」 「…ありがとう」

バタン、 と、 ドアが閉まる。 ギシギシ、 という、 階段を、 下りていく、 足音。 それが、 聞こえなくなるまで、 私は、 その場に、 立ち尽くしていました。

嵐が、 過ぎ去った後のようでした。 部屋が、 春が、 来る前よりも、 ずっと、 広く、 そして、 寒く、 感じられました。 「そっくり…?」 春の、 最後の言葉が、 耳に、 こびりついて、 離れない。 何に、 そっくりだ、 と、 言おうとしたんだろう。

私は、 畳の上に、 残された、 段ボール箱に、 目をやりました。 ゆっくりと、 その、 ガムテープを、 剥がす。 中から、 出てきたのは、 アルバムでした。 色褪(あ)せた、 布張りの、 アルバム。

そっと、 開く。 一枚目。 そこには、 私が、 いました。 20歳くらいの、 私。 そして、 隣には、 まだ、 髪が、 ふさふさとして、 日に焼けた、 若々しい、 健二が、 笑っていました。 二人とも、 泥だらけになって、 ろくろの前に、 座っている。 そう、 これは、 学生時代の、 写真。 あの、 欠けたマグカップを、 作った、 あの頃。

次のページ。 次のページ。 どの写真の、 私たちも、 貧しかったけれど、 笑っていました。 幸せそうに、 笑っていました。 いつから、 私たちは、 こんな風に、 笑わなくなったんだろう。 私は、 その、 色褪せた笑顔を、 指で、 なぞりました。

そして、 アルバムの、 一番、 最後に、 挟まっていた、 一枚の、 写真。 それは、 場所を、 写したものでした。 古い、 アパートの、 一室。 男が、 一人、 小さな、 テーブルに向かって、 何かを、 食べている、 後ろ姿。 その、 テーブルの上には、 カップラーメンの、 容器が、 見えました。 そして、 その、 部屋の壁。 そこには、 くっきりと、 一本の、 亀裂が、 入っていました。 不器用な、 パテで、 補修された、 あの、 亀裂が。

私は、 息を、 呑みました。 写真の中の、 壁と、 今、 目の前にある、 この部屋の、 壁。 その、 亀裂の、 形が、 あまりにも、 似ていたから。 「そっくり…」 春の、 声が、 蘇る。 私は、 混乱しました。 これは、 一体、 どういうこと? この、 写真は、 いつの? そして、 この、 後ろ姿は、 誰…?

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HỒI 1 – PHẦN 3

私は、 写真と、 目の前の壁を、 何度も、 見比べました。 写真の中の、 あの、 不格ipyona補修跡。 今、 私が、 触れている、 この、 ザラザラとした、 感触。 同じ、 だ。 間違いなく、 同じ、 亀裂。

「どういう、 こと…?」 声が、 震えました。 写真の中の、 後ろ姿。 Tシャツの、 肩のライン。 髪の、 生え際(はえぎわ)。 若々しい、 その背中は、 間違いなく、 20代の頃の、 健二でした。

健二が、 この部屋に? いつ? なぜ? 私たちは、 結婚する前、 学生時代は、 それぞれ、 別のアパートに、 住んでいたはず。 私は、 女子寮に近かったし、 彼は、 大学の、 近くの、 ワンルームだった。 こんな、 古いアパートに、 彼が住んでいたなんて、 一度も、 聞いたことがない。

混乱、 という、 言葉では、 足りませんでした。 まるで、 時間の、 流れが、 歪(ゆが)んでしまったかのよう。 春は、 なぜ、 この写真を、 持ってきた? 「そっくりだ」 と、 言った。 あの子は、 知っていた…? この写真の、 意味を。 この場所が、 私にとって、 どういう場所か、 いや、 健二にとって、 どういう場所だったのかを。

私は、 その写真を、 小さな、 テーブルの上に、 置きました。 欠けたマグカップと、 亀裂の入った、 壁の写真。 その二つが、 並んでいる光景は、 あまりにも、 奇妙でした。

頭が、 うまく、 働かない。 私は、 この、 不可解な、 「偶然」 から、 目をそらすように、 立ち上がりました。 「そうだ、 ご飯を、 作らなくちゃ」 さっき、 買ってきた、 お米。 大根。 私は、 自分に、 言い聞かせるように、 呟きました。 「まずは、 生きること。 考えるのは、 その後だ」

お米を、 研(と)ぐ。 買ってきた、 安物の、 プラスチックの、 ボウルに、 米を入れ、 冷たい水で、 かき混ぜる。 私の手は、 土を、 こねる手。 ろくろを、 回す手。 でも、 米を研ぐ、 という、 単純な作業は、 ひどく、 ぎこちなかった。 米粒が、 指の間から、 こぼれ落ちて、 流し台に、 散らばる。

「…ダメね、 私」 自嘲(じちょう)の、 笑みが、 こぼれました。 陶芸家としては、 一流、 かもしれない。 でも、 生活者としては、 三流だ。 あの、 マンションにいた頃、 私は、 キッチンに、 立つことすら、 稀(まれ)だったから。

鍋で、 ご飯を炊く。 炊飯器なんて、 この部屋にはない。 火加減が、 分からない。 焦げ付かないか、 不安で、 コンロの前から、 離れられない。 大根の、 皮をむく。 包丁を、 握る手も、 おぼつかない。 自分の、 指を、 切ってしまいそうで、 ヒヤヒヤする。 分厚く、 不揃いな、 いちょう切り。 それでも、 なんとか、 味噌汁の、 準備を、 整えました。

グツグツ、 と、 鍋が、 音を立てる。 だんだん、 ご飯の、 いい匂いが、 してきた。 大根の、 煮える匂い。 味噌を、 溶き入れる。 フワッ、 と、 懐かしい、 香りが、 湯気と共に、 立ち上った。

それは、 私が、 ずっと、 忘れていた、 匂いでした。 生活の、 匂い。 自分で、 作り出す、 ささやかな、 営みの、 匂い。 その匂いが、 この、 冷たかった部屋の、 空気を、 少しずつ、 満たしていく。

その時、 また、 隣の、 102号室から、 声がしました。 「ただいまー」 「おかえりなさい! から揚げ、 温まってるわよ!」 「おお、 やった!」 ドタドタ、 と、 子供が、 父親に、 駆け寄る音。 家族の、 笑い声。

私の、 質素な、 ご飯と、 大根の味噌汁。 隣の、 温かい、 から揚げと、 家族の、 団らん。 その、 コントラスト。 孤独が、 身に沁(し)みました。 でも、 それは、 嫌な、 孤独ではなかった。 あの、 静かな、 マンションで、 一人、 高級な、 デリバリーを、 食べていた時とは、 違う。 壁一枚、 隔てた、 向こう側に、 確かに、 人の、 温もりが、 ある。 その、 気配を感じながら、 食べる、 ご飯。 それは、 ある意味、 贅沢なこと、 なのかもしれない、 と、 思いました。

私は、 小さな、 テーブルに向かい、 手を、 合わせました。 「いただきます」 声に、 出して、 言ってみた。 何年ぶりだろう。 炊きたての、 ご飯。 不格好な、 大根の、 味噌汁。 一口、 食べる。 熱い。 そして、 とても、 優しい味がした。 涙が、 ぽろり、 と、 一粒、 こぼれ落ちました。 しょっぱい、 涙の味。 でも、 それは、 悲しい、 涙ではなかった。

数日が、 過ぎました。 私は、 この、 六畳一間の、 リズムに、 少しずつ、 慣れていきました。 朝、 隣の、 目覚まし時計で、 起きる。 商店街で、 八百屋の、 おじさんと、 軽口を、 叩きながら、 野菜を、 買う。 「お姉さん、 今日は、 ほうれん草が、 安いよ!」 「じゃあ、 それ、 いただくわ」 そんな、 やり取りが、 自然に、 できるようになっていた。

部屋に、 戻ると、 私は、 あの、 亀裂を、 眺めるのが、 日課に、 なっていました。 写真の、 ことも、 気になっていた。 でも、 健二に、 電話して、 聞く勇気は、 なかった。 「あの、 あなた、 昔、 この部屋に、 住んでた?」 なんて。 今さら、 何を、 言っているんだ、 と、 笑われるか、 あるいは、 冷たく、 あしらわれるのが、 オチだ。

私は、 その、 不格好な、 補修跡を、 どうにか、 しようと、 思いました。 上から、 きれいな、 壁紙でも、 貼ろうか。 でも、 それは、 なんだか、 違う気がした。 この、 「傷」 を、 隠してしまうのは、 いけないことのような。 私は、 結局、 雑巾で、 その、 ザラザラした、 表面の、 埃を、 拭くだけに、 留めました。 拭けば、 拭くほど、 その、 不器用な、 「手当て」 の、 跡が、 愛おしく、 思えてくるから、 不思議でした。

私は、 まだ、 工房には、 戻っていませんでした。 土に、 触りたい、 という、 気持ちは、 ある。 でも、 まだ、 その時では、 ない、 と、 感じていました。 今、 私が、 作るべきなのは、 何万もする、 花瓶や、 茶碗ではない。 もっと、 別の、 何か。 でも、 それが、 何かは、 まだ、 分からなかった。

その夜。 私は、 いつものように、 質素な、 夕食を、 終え、 本を、 読もうと、 していました。 上の階の、 子供は、 もう、 寝たのか、 静かだ。 隣の、 夫婦は、 テレビを、 見て、 笑っている。 その、 穏やかな、 夜の、 静寂を、 破ったのは、 ポケットの中の、 スマートフォンの、 振動でした。

画面が、 光る。 そこに、 表示された、 名前に、 私は、 息を、 呑みました。 「竹田 健二」 (たけだ けんじ) 夫、 いや、 元・夫の、 名前。 離婚の、 手続き以来、 彼から、 連絡が、 来るのは、 初めてでした。

メッセージは、 短く、 簡潔でした。 健二らしい、 事務的な、 文面。 「由美(ゆみ)」 まだ、 そう、 呼んでくれるんだ、 と、 胸が、 小さく、 痛みました。 「春から、 住所は、 聞いた。 明日の夜、 7時頃、 春と、 二人で、 そっちに行く」

ドキッ、 としました。 来る? ここに? この、 狭い、 古い、 部屋に? なぜ?

「夕食を、 まだ、 決めていないなら、 何か、 簡単なものを、 持って行こうと思う」 夕食。 簡単なもの。

「それと、 渡したい、 ものがある」

渡したいもの? 何? 養育費の、 話なら、 もう、 弁護士を、 通して、 終わっている。 今さら、 私に、 渡すものなんて、 何もない、 はず。

心臓が、 バクバクと、 音を立て始めました。 怖い。 何が、 怖いのか、 分からない。 彼に、 会うのが、 怖いのか。 この、 みすぼらしい、 生活を、 見られるのが、 怖いのか。 それとも、 彼が、 持って来る、 「何か」 を、 知るのが、 怖いのか。

私は、 返事を、 打てませんでした。 ただ、 その、 短い、 メッセージを、 何度も、 何度も、 読み返す。 「春から、 住所は、 聞いた」 春が、 教えたんだ。 あの子は、 何か、 意図が、 あって…? あの、 「そっくりだ」 という、 言葉。 あの、 写真。

私は、 顔を上げ、 部屋の、 あの、 亀裂を、 見つめました。 電灯の、 オレンジ色の、 光の中で、 その、 不器用な、 補修跡は、 まるで、 古い、 傷跡のように、 生々しく、 そこ、 に、 存在していました。 写真の中の、 健二の、 背中。 この、 壁。 そして、 明日の、 訪問。 すべてが、 一本の、 見えない糸で、 繋がろうと、 している。 そんな、 不吉な、 予感が、 私を、 包み込みました。 私は、 ゆっくりと、 「了解」 とだけ、 打ち返し、 スマートフォンを、 閉じました。 明日の夜。 この、 六畳の部屋で、 何かが、 終わるのか、 それとも、 何かが、 始まるのか。 私には、 全く、 予測が、 つきませんでした。

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HỒI 2 – PHẦN 1

翌日、 私は、 朝から、 落ち着かなかった。 午後7時。 健二が、 来る。 春と、 一緒に。

私は、 いつもより、 念入りに、 部屋を掃除しました。 といっても、 掃(は)いて、 拭(ふ)くだけ。 隠しようのない、 貧しさが、 そこにある。 私は、 あの、 欠けたマグカップを、 テーブルの上から、 片付けようか、 と、 一瞬、 思いました。 でも、 できなかった。 それは、 私の、 最後の、 意地のような、 ものだったから。

夕方、 早めに、 シャワーを浴びた。 共同の、 冷たい、 シャワー室。 湯気の中で、 私は、 何を、 恐れているんだろう、 と、 自問しました。 彼に、 こんな、 生活を見られること? 違う。 彼が、 私を、 見ても、 もう、 何も、 感じない、 と、 知っているからだ。 私たちが、 もう、 夫婦では、 ない、 という、 厳然たる、 事実。 それを、 この、 六畳間で、 突き付けられるのが、 怖かった。

午後6時50分。 私は、 テーブルの前に、 正座していました。 まるで、 何かを、 待つ、 囚人のように。 壁の、 亀裂が、 やけに、 目につく。 隣の、 102号室は、 今夜は、 静かでした。

午後7時、 きっかり。 ギシ、 ギシ、 ギシ、 と、 階段を上る、 足音。 二人分。 重い、 大人の、 足音と、 少し、 ためらいがちな、 若い、 足音。 コン、 コン。 ノックの音。

「…はい」 声が、 上ずった。 ゆっくりと、 ドアが、 開く。 そこに、 立っていました。 健二と、 春が。

健二は、 薄い、 グレーの、 コートを、 着ていました。 最後に、 会った、 弁護士事務所の時より、 痩(や)せた、 気がする。 目の下の、 クマが、 濃くなっていた。 彼は、 私と、 目を、 合わせず、 狭い、 部屋の中を、 一瞥(いちべつ)しました。 その、 無表情な、 仮面の、 下で、 彼が、 何を、 感じたのか、 私には、 分からなかった。

春は、 気まずそうに、 私の、 斜め後ろに、 立っている。 「お邪魔します」 健二が、 低い、 声で、 言いました。 そして、 手にしていた、 スーパーの、 ビニール袋を、 差し出した。 カサカサ、 と、 音がする。

「あの…」 春が、 口を開きました。 「父さんが、 母さん、 あんまり、 食べ物、 持ってないかも、 しれないからって。 それで、 これ」 春が、 ビニール袋から、 取り出したのは、 見慣れた、 カップラーメン。 昨日、 私が、 食べたのと、 同じ、 しょうゆ味。 それが、 三つ。

私は、 それを見て、 言葉を、 失いました。 元・夫と、 息子が、 離婚した、 妻、 であり、 母、 である、 女の、 元に、 差し入れとして、 持ってきたもの。 それが、 カップラーメン、 三つ。 あまりにも、 今の、 私たちの、 関係を、 象徴しているようで、 笑い出したいような、 泣きたいような、 気分でした。

「…ありがとう。 助かるわ」 私は、 なんとか、 声を、 絞り出しました。 「ちょうど、 お腹が、 空いてたところ。 …あなたたちも、 まだ、 でしょう? 食べて、 いく?」

我ながら、 馬鹿なことを、 聞いた、 と、 思いました。 こんな、 狭い部屋で。 三人が、 膝を、 突き合わせて、 カップラーメンを、 すする。 滑稽(こっけい)だ。

健二は、 答えませんでした。 ただ、 春が、 「うん。 食べてく。 俺も、 腹、 減った」 と、 言ったのです。 健二は、 驚いたように、 息子を見ました。 でも、 何も、 言わなかった。 「…そう。 じゃあ、 お湯、 沸かすわね」

私は、 立ち上がり、 あの、 うなる、 電気ポットに、 水を入れました。 ゴー、 という、 音が、 気まずい、 沈黙を、 埋めてくれる。 健二は、 コートを、 脱ぎ、 畳の上に、 窮屈(きゅうくつ)そうに、 座りました。 春も、 その隣に。 六畳間が、 急に、 半分くらいの、 広さに、 なった、 気がしました。

お湯が、 沸くまでの、 数分間。 誰も、 口を、 開きませんでした。 私は、 背中を、 向けたまま、 流し台に、 立っていた。 二人の、 視線を、 背中に、 感じながら。

ポットが、 カチッ、 と、 音を立てる。 私は、 三つの、 カップラーメンに、 お湯を、 注ぎました。 「3分、 待ってね」 「うん」 春が、 答える。 健二は、 相変わらず、 黙っていました。

私は、 テーブルに、 カップを、 並べました。 そして、 自分の、 マグカップ。 春の、 湯呑み。 (それは、 昨日、 私が、 百円ショップで、 買ってきたもの) 健二には、 何も、 出すものが、 なかった。 「ごめんなさい、 コップが、 足りなくて…」 「いい。 水は、 いらない」 健二が、 初めて、 私に、 言いました。 冷たい、 声ではなかった。 ただ、 ひどく、 疲れている、 声でした。

3分が、 経ちました。 「どうぞ」 私たちは、 割り箸を、 割りました。 パキン、 パキン、 パキン。 三つの、 音が、 部屋に、 響く。

ズ、 ズ、 ズ… 麺を、 すする音だけが、 聞こえる。 熱い。 しょっぱい。 健二は、 猫背になって、 ひたすら、 麺を、 口に、 運んでいました。 私は、 彼を、 盗み見ました。 ああ、 この人は、 本当に、 老けた。 私と、 一緒に、 いた、 20年間。 私は、 彼を、 こんな風に、 疲れさせて、 しまったんだろうか。

いや、 違う。 彼は、 仕事に、 疲れているんだ。 私との、 生活が、 重荷だったんだ。 だから、 あんなに、 あっさりと、 私を、 手放した。 そう、 自分に、 言い聞かせました。 でも、 目の前で、 カップラーメンを、 すする、 彼の姿は、 私が、 憎んでいた、 「冷たい夫」 とは、 どこか、 違って見えました。

春は、 私たち、 二人を、 交互に、 見ながら、 黙々と、 食べている。 あの子は、 何を、 思っているんだろう。 この、 哀れな、 「最後の晩餐」 のような、 光景を、 どう、 目に、 焼き付けているんだろう。

その時。 健二の、 手が、 止まりました。 彼は、 麺から、 顔を上げ、 じっと、 一点を、 見つめていました。 彼の、 視線の先。 そこには、 あの、 壁の、 亀裂が、 ありました。

私は、 息を、 呑みました。 彼は、 その、 不格好な、 補修跡を、 まるで、 懐かしい、 何かを、 見るような、 目で、 見つめていました。 ほんの、 数秒。 でも、 私には、 永遠のように、 感じられた。

彼は、 はっ、 と、 我に返ったように、 視線を、 カップに、 戻しました。 そして、 また、 麺を、 すすり始めた。 顔は、 湯気で、 よく、 見えない。

私は、 彼を、 見つめました。 彼は、 私を、 見ません。 春は、 下を向いて、 スープを、 飲んでいます。 三人が、 いる。 でも、 誰も、 繋がっていない。 物理的には、 こんなに、 近いのに、 心は、 宇宙の、 果てと、 果てほどに、 離れている。

「ごちそうさま」 最初に、 食べ終わったのは、 春でした。 「美味かった」 「…そう。 よかったわ」 続いて、 健二も、 スープを、 飲み干し、 箸を、 置きました。 「ごちそうさまでした」

私は、 まだ、 半分も、 食べていませんでした。 でも、 もう、 喉を、 通りそうにない。 私は、 そっと、 箸を、 置きました。 「…お粗末様でした」

ああ、 終わった。 私たちの、 関係は、 もう、 本当に、 終わったんだ。 この、 カップラーメン、 一杯の、 時間で、 それを、 痛いほど、 思い知らされた。 愛も、 情熱も、 憎しみさえも、 通り越して、 後に、 残ったのは、 この、 耐え難いほどの、 気まずさと、 虚(むな)しさ。 失って、 しまった。 もう、 二度と、 取り戻せない。 彼と、 笑い合った、 あの、 色褪(あ)せた、 写真の中の、 日々は、 永遠に、 失われた。 その、 「喪失」 の、 重みが、 今、 この、 瞬間に、 ズシン、 と、 私に、 のしかかってきました。

「じゃあ、 俺たち、 そろそろ、 行くよ」 春が、 立ち上がりました。 「うん。 父さん、 明日も、 仕事、 早いし」 「…そう。 来てくれて、 ありがとう」 健二が、 無言で、 コートを、 羽織る。 その時でした。 「あ、 そうだ。 由美」 健二が、 私を、 呼びました。 そして、 コートの、 内ポケットから、 何かを、 取り出しました。 「渡したい、 ものが、 あるって、 言っただろう」

彼が、 私に、 差し出したのは、 小さな、 茶色い、 封筒でした。 ずいぶん、 古いもののようで、 角が、 擦り切れている。 宛名も、 何も、 書かれていない。 ただ、 糊(のり)で、 封が、 されていました。 「…何? これ」 「デスクを、 整理してたら、 出てきたんだ」 健二は、 やはり、 私の、 目を、 見ません。 「…昔、 の、 ものだ。 俺が、 持っていても、 仕方ない。 お前が、 処分してくれ」 「昔のもの…?」 「ああ。 じゃあ、 行くぞ、 春」

健二は、 それだけ、 言うと、 私に、 背を向け、 狭い、 玄関で、 靴を履きました。 春が、 私を、 振り返り、 「母さん、 また、 来るよ」 と、 小さく、 言いました。 「…ええ。 気をつけて」

バタン。 ドアが、 閉まる。 ギシ、 ギシ、 ギシ… 二人の、 足音が、 階段を、 下りていき、 やがて、 聞こえなくなりました。

私は、 その場に、 立ち尽くしていました。 部屋に残されたのは、 カップラーメンの、 空(から)の、 容器、 三つ。 テーブルの、 上に、 残る、 しょうゆの、 匂い。 そして、 私の、 手の中にある、 この、 正体不明の、 古い、 茶色い、 封筒。 私は、 ゴクリ、 と、 唾を、 飲み込みました。 この、 中に、 一体、 何が、 入っているんだろう。 健二が、 私に、 「処分してくれ」 と、 言った、 もの。 それは、 私たちの、 過去の、 何を、 意味しているんだろう。

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HỒI 2 – PHẦN 2

部屋は、 急に、 静かになりました。 三つの、 空の、 カップラーメンの、 容器が、 テーブルの上に、 残されている。 さっきまで、 充満していた、 しょうゆの、 匂いと、 人の、 気配が、 まるで、 嘘だったかのように、 急速に、 冷えていく。 元の、 冷たくて、 がらんとした、 六畳間に、 戻ってしまった。

私の、 手の中には、 あの、 茶色い、 封筒。 カサリ、 と、 乾いた、 音がする。 それは、 健二が、 20年以上の、 結婚生活の中で、 最後に、 私に、 手渡した、 「もの」。 「処分してくれ」 と、 彼は、 言いました。 その、 言葉の、 重さ。

私は、 その場に、 座り込みました。 膝が、 笑っている。 立っていられなかった。 手も、 指先も、 小刻みに、 震えていました。 怖い。 開けるのが、 怖い。 この、 薄っぺらな、 封筒の、 中に、 私たちの、 「死骸」 の、 ようなものが、 入っている、 気がした。 知りたくない、 過去。 私を、 傷つける、 何か。

でも、 開けなければ、 ならない。 これは、 彼が、 私に、 課した、 最後の、 「宿題」 のようでした。 私は、 深呼吸を、 一つ、 しました。 そして、 震える、 指先で、 古い、 糊付けされた、 封を、 ゆっくりと、 剥がし、 始めました。

ビリ、 ビリ、 と、 乾いた、 紙の、 裂ける音。 それは、 今の、 私の、 心臓の、 音と、 よく、 似ていました。

中から、 出てきたのは、 予想していた、 手紙や、 書類、 では、 ありませんでした。 まず、 私の、 手のひらに、 滑り落ちてきたのは、 一つの、 色褪(あ)せた、 プラスチック片。 それは、 ギターピック、 でした。 べっ甲(べっこう)柄の、 使い古された、 ピック。 角が、 丸く、 削れている。

私は、 息を、 呑みました。 これ… これ、 憶えてる。 健二が、 学生時代、 いつも、 胸の、 ポケットに、 入れていた、 ピック。 彼は、 下手くそな、 ギターを、 弾くのが、 好きだった。 私に、 自作の、 ラブソング、 なんて、 歌ってくれたことも、 あった。 あの、 写真の、 頃。 私たちが、 まだ、 泥だらけで、 笑い合っていた、 頃。

「就職したら、 もう、 弾かない。 そんな、 時間はない」 そう、 言って、 彼が、 ギターを、 ケースに、 しまった日。 あの、 ピックも、 一緒に、 どこかに、 消えてしまったと、 思っていた。 彼は、 これを、 ずっと、 持っていた…? なぜ?

そして、 封筒の、 奥から、 もう一つ、 出てきたもの。 それは、 小さな、 黒い、 手帳でした。 手のひらに、 収まる、 サイズ。 表紙は、 擦り切れて、 もとの、 色が、 何だったのかも、 分からない。 私は、 その、 ピックを、 握りしめたまま、 恐る恐る、 その、 手帳の、 表紙を、 開きました。

一枚目。 そこには、 見慣れた、 でも、 今より、 ずっと、 若々しく、 力強い、 筆跡が、 ありました。 健二の、 字。

日付が、 目に、 飛び込んできました。 「1999年 4月10日」

25年前。 私たちが、 まだ、 学生で、 恋人同士だった、 年。 私の、 心臓が、 ドクン、 と、 大きく、 跳ねました。

私は、 ページを、 めくりました。 最初の、 書き出し。 「今日、 引っ越した。 巷裏荘(こうりそう)、 103号室。 古いが、 家賃が、 破格に、 安い。 隣の、 壁には、 大きな、 亀裂が、 入っている。 でも、 仕方ない。 ここから、 俺の、 『秘密の』 生活が、 始まる。 由美の、 夢を、 支えるための、 生活だ」

「…え?」 私は、 声を、 漏らしました。 「巷裏荘… 103号室…?」 私は、 反射的に、 自分の、 部屋の、 ドアを、 見ました。 「103」 と、 書かれた、 プレート。 そして、 視線を、 壁に、 移す。 あの、 亀裂。

「まさか…」 全身の、 血が、 逆流するようでした。 偶然? いや、 違う。 春が、 持ってきた、 あの、 写真。 健二の、 後ろ姿。 カップラーメン。 壁の、 亀裂。 「そっくりだ」 と、 言った、 春。 彼が、 今日、 父を、 ここに、 連れてきた、 意味。

私は、 震える手で、 次の、 ページを、 めくりました。 「4月15日。 由美が、 陶芸の、 特別クラスに、 選ばれた。 あいつ、 飛び上がって、 喜んでた。 俺も、 嬉しい。 ただ、 学費が、 また、 上がる。 建設現場の、 日雇い、 だけじゃ、 足りない。 明日から、 コンビニの、 夜勤も、 入れることにした。 寝る、 時間は、 なくなるが、 由美の、 あの、 笑顔のためなら、 なんだって、 できる」

「…何を… 言ってるの… あなた…」 私は、 知らなかった。 そんなこと、 一言も、 聞いたことがなかった。 彼は、 いつも、 「親からの、 仕送りで、 大丈夫だ」 と、 笑っていた。 私は、 それを、 疑いも、 しなかった。 自分の、 夢に、 夢中で。 彼が、 私の、 見えない、 ところで、 何をしているか、 なんて、 考えようとも、 しなかった。

ページが、 進む。 「5月3日。 ゴールデンウィーク。 由美は、 課題の、 窯焚(かま)き(だ)きだ、 と、 泊まり込み。 俺は、 三日間、 寝ずに、 働いた。 さすがに、 キツい。 夕飯は、 今日も、 カップラーメン、 しょうゆ味。 でも、 これが、 案外、 うまい。 由美が、 この間、 『これ、 美味しいのよね』 って、 言ってたやつだ。 同じ、 ものを、 食べてる、 と思うと、 一人でも、 頑張れる」

涙が、 溢(あふ)れて、 手帳の、 文字が、 滲(にじ)みました。 今日、 彼が、 持ってきた、 カップラーメン。 しょうゆ味。 偶然じゃ、 なかった。 彼は、 憶えていた。 25年前、 私が、 何気なく、 言った、 一言を。 そして、 一人、 この、 冷たい、 部屋で、 同じ、 味を、 すすりながら、 私を、 想って、 くれていた。

「5月20日。 由美が、 初めて、 『作品』 を、 くれた。 縁の、 欠けた、 マグカップ。 『失敗作』 だって、 言って、 捨てようと、 してた。 馬鹿だな、 お前は。 こんなに、 温かい、 形なのに。 これが、 お前の、 最初の一歩だ。 俺の、 宝物だ。 これで、 毎朝、 コーヒーを、 飲むことに、 決めた」

「あ… ああ…」 声にならない、 声が、 漏れました。 テーブルの上に、 置かれた、 私の、 マグカップ。 縁の、 欠けた。 私が、 「自分の、 原点」 だ、 なんて、 カッコつけて、 持ってきた、 マグカップ。 違う。 それは、 私が、 捨てようとした、 ゴミ。 それを、 健二が、 「宝物だ」 と、 言って、 くれた。 私は、 そんな、 大事な、 ことさえ、 忘れて、 生きてきた。 忘れていたのは、 彼じゃなかった。 私だった。

手帳の、 ページは、 続く。 淡々と、 でも、 確かな、 疲労と、 愛情が、 滲み出た、 文字で。 「6月11日。 雨。 最悪だ。 壁の、 亀裂から、 水が、 漏れてきた。 布団が、 少し、 濡れた。 大家に、 言っても、 無駄だろう。 明日の、 日雇い、 キャンセルして、 ホームセンターで、 パテを、 買ってきた。 生まれて、 初めて、 壁なんか、 補修した。 見てくれは、 最悪だ。 まるで、 傷跡みたいに、 盛り上がった。 でも、 もう、 水は、 漏れない。 これで、 いい。 俺が、 この、 壁みたいに、 由美を、 守る」

私は、 もう、 座っていられませんでした。 手帳を、 握りしめたまま、 這(は)うように、 壁の、 そばへ、 行きました。 そして、 指先で、 あの、 不格好な、 補修跡に、 触れました。 「見てくれは、 最悪」 「傷跡みたい」 彼が、 書いた、 通り。 でも、 「もう、 水は、 漏れない」 「俺が、 由美を、 守る」 この、 ザラザラした、 感触は、 25年前の、 健二の、 不器用な、 優しさ、 そのものだった。 私は、 その、 「傷跡」 に、 頬を、 押し当てました。 冷たい、 コンクリート。 でも、 その、 奥から、 彼の、 体温が、 伝わってくるようでした。 私は、 声を、 上げて、 泣きました。 嗚咽(おえつ)が、 止まらない。 どうして、 私は、 何も、 知らなかったんだろう。 どうして、 彼は、 何も、 言ってくれなかったんだろう。

「ごめんなさい… ごめんなさい、 健二…」 誰に、 謝っているのか。 今、 ここに、 いない、 彼に。 25年前の、 彼に。 私は、 ただ、 謝り続けるしか、 ありませんでした。

手帳は、 まだ、 続きます。 私は、 涙で、 濡れた、 目で、 最後の、 ページを、 探しました。 日付が、 飛ぶ。 2年後。 「2001年 3月25日」 「由美の、 卒業、 制作展。 すごかった。 あいつは、 本物の、 アーティストだ。 才能が、 爆発してた。 ギャラリーの、 オーナーが、 何人も、 名刺を、 渡してた。 俺は、 会場の、 一番、 後ろから、 見てた。 あいつは、 光の、 真ん中に、 いた。 俺に、 気づかなかった。 それで、 いい。 俺の、 役目は、 終わった」

「明日から、 俺は、 商社マンだ。 スーツを、 着る。 もう、 この、 アパートには、 戻らない。 この、 手帳も、 ギターピックも、 全部、 封筒に、 入れて、 机の、 奥に、 しまう。 さようなら、 俺の、 青春。 こんにちは、 俺の、 『現実』。 由美、 おめでとう。 お前は、 羽ばたけ。 俺が、 支えてきた、 なんて、 絶対に、 知られちゃ、 いけない。 それは、 お前の、 翼を、 重くする、 だけだから」

それが、 最後でした。 手帳は、 そこで、 終わっていました。

私は、 手帳を、 胸に、 抱きしめ、 床に、 崩れ落ちました。 声が、 出ない。 涙も、 枯れ果てた。 そういうこと、 だったのか。 彼が、 私を、 愛していなかった、 んじゃない。 彼が、 冷たくなった、 んじゃない。 彼は、 「佐藤由美」 という、 陶芸家を、 作り上げるために、 「竹田健二」 という、 一人の、 人間の、 すべてを、 燃やし尽くして、 しまったんだ。

彼の、 疲れ。 彼の、 沈黙。 彼が、 あんなに、 あっさりと、 離婚に、 応じた、 理由。 すべて、 分かった。 彼は、 もう、 「与える」 ものが、 何も、 残って、 いなかった。 彼は、 私を、 「自由」 に、 することが、 最後の、 「愛」 だ、 と、 思ったんだ。 「お前の、 翼を、 重くする」 から。 彼は、 この、 真実を、 墓場まで、 持っていく、 つもりだった。

「処分してくれ」 彼が、 私に、 言った、 言葉。 それは、 「この、 過去を、 捨ててくれ」 という意味じゃ、 なかった。 彼が、 できなかった、 「告白」 そのものだった。 「これが、 俺の、 全てだった。 お前が、 知って、 そして、 お前が、 終わらせてくれ」 という、 悲痛な、 叫びだった。

私は、 どうすれば、 いい? この、 重すぎる、 真実を、 抱えて。 私は、 彼を、 成功という、 名の、 孤独な、 祭壇の、 上で、 彼の、 犠牲の、 上に、 立ち続けていた、 ピエロだった。

私は、 泣きながら、 笑いました。 ああ、 そうか。 私は、 やっと、 分かった。 私が、 この、 アパートに、 引かれて、 来た、 理由。 呼ばれたんだ。 25年前の、 彼の、 魂に。 この、 亀裂に。 この、 部屋に。 彼が、 「守ろう」 とした、 私自身に、 会うために。 そして、 彼が、 どれほど、 私を、 愛してくれていたか、 を知るために。 何もかも、 失った、 今、 この、 瞬間に。

[Word Count: 3288]

HỒI 2 – PHẦN 3

夜が、 明けた。 私は、 一睡も、 できませんでした。 あの、 古い、 黒い手帳を、 胸に抱きしめたまま、 壁の、 亀裂を、 見つめて、 座っていた。

部屋は、 もう、 青白い、 朝の光に、 満たされていました。 隣の、 102号室から、 また、 目覚まし時計の、 音が、 聞こえる。 ドタバタと、 人が、 走り回る音。 「遅刻するぞ!」 という、 声。 昨日と、 同じ、 朝が、 始まった。 でも、 私にとって、 世界は、 昨日とは、 まるで、 違って、 見えました。

私は、 ゆっくりと、 立ち上がりました。 体中が、 痛い。 心も、 痛い。 でも、 不思議と、 頭は、 冴(さ)えわたっていました。 昨日まで、 私を、 包んでいた、 自己憐憫(じこれんびん)や、 孤独感は、 消え去っていました。 後に、 残ったのは、 焼け付くような、 痛みと、 そして、 あまりにも、 はっきりとした、 一つの、 「事実」。 健二の、 25年分の、 犠牲。 私の、 25年分の、 「無知」 という、 罪。

テーブルの上。 三つの、 カップラーメンの、 空の、 容器が、 並んでいる。 昨夜の、 あの、 滑稽(こっけい)で、 哀れな、 「家族」 の、 風景。 あれは、 滑稽でも、 哀れでも、 なかった。 あれは、 健二からの、 最初で、 最後の、 「告白」 の、 儀式だったんだ。 春は、 それを、 知っていて、 セッティングした。 あの、 「しょうゆ味」 は、 25年前の、 彼の、 血と、 汗の、 味だった。

私は、 その、 空の、 容器を、 手に取りました。 捨てられない。 これは、 捨ててはいけない、 ものだ。 私は、 流し台で、 三つの、 容器を、 丁寧に、 洗いました。 プラスチックに、 残った、 油の、 ぬめりを、 指先で、 こすり、 落とす。 まるで、 聖なる、 器でも、 扱うように。 洗い終わった、 容器を、 布巾(ふきん)で、 拭き、 テーブルの上に、 もう一度、 並べました。 まるで、 三つの、 小さな、 墓標(ぼひょう)の、 ように。

それから、 私は、 自分の、 両手を、 見つめました。 陶芸家の、 手。 土を、 こね、 形を、 作り出す、 手。 この、 手に、 技術を、 授(さず)けるために、 彼は、 あんな、 ボロボロに、 なるまで、 働いた。 この、 手が、 生み出す、 「作品」 は、 何十万円という、 値段で、 売買される。 その、 土代(つちだい)が、 彼の、 血のにじむような、 労働で、 賄(まかな)われていたことなど、 知りもせず、 私は、 「芸術家」 気取りで、 生きてきた。

恥ずかしい。 という、 言葉では、 足りない。 私は、 彼の、 人生を、 「搾取」 していた。 愛の、 名のもとに。

私は、 あの、 欠けた、 マグカップを、 手に取りました。 彼が、 「宝物だ」 と、 言った、 カップ。 私が、 「失敗作だ」 と、 捨てようとした、 もの。 今、 触れると、 その、 欠けた、 縁(ふち)が、 鋭く、 私の、 指を、 責めているようでした。 「お前は、 何も、 分かって、 いなかった」 と。

私は、 立ち上がりました。 そして、 壁の、 亀裂の前に、 立ちました。 彼が、 25年前に、 残した、 「傷跡」。 「俺が、 由美を、 守る」 と、 誓った、 証(あかし)。 私は、 その、 不格好な、 補修跡を、 両手で、 そっと、 包み込みました。 冷たい。 でも、 その、 奥に、 確かに、 彼の、 鼓動が、 聞こえる、 気がした。

「健二」 私は、 声に、 出して、 彼の、 名前を、 呼びました。 「あなた、 だったのね」 ずっと、 私を、 支えてくれていたのは。 私が、 成功して、 彼を、 見下すように、 なってからも、 ずっと、 ずっと、 彼は、 この、 最初の、 「誓い」 を、 守り続けて、 くれていた。 彼が、 疲弊(ひへい)し、 沈黙し、 私から、 離れていく、 ことでしか、 その、 「重荷」 から、 逃れる、 術(すべ)が、 なかった、 というのに。

私は、 もう、 泣きませんでした。 涙は、 枯れ果てた。 今、 私の中に、 あるのは、 深い、 深い、 鎮魂(ちんこん)の、 思いと、 そして、 一つの、 燃えるような、 「決意」。

私は、 この、 真実に、 「答え」 を、 出さなければならない。 言葉での、 「ごめんなさい」 や、 「ありがとう」 では、 ない。 そんな、 薄っぺらな、 ものでは、 彼の、 25年間に、 到底、 釣り合わない。 私が、 答える、 方法は、 一つしかない。 彼が、 私に、 託(たく)した、 「陶芸」 で。 彼が、 その、 身を、 削って、 与えてくれた、 この、 「手」 で。

私は、 荷物を、 まとめ、 始めました。 荷物と、 いっても、 来た時と、 同じ。 段ボール、 三つ分。 いや、 もっと、 少ない。 もう、 服も、 本も、 いらない。 私は、 ボストンバッグに、 最低限の、 着替えと、 洗面用具を、 詰めました。

そして、 一番、 大事なものを、 入れた。 あの、 黒い、 手帳。 使い古された、 ギターピック。 三つの、 空の、 カップラーメンの、 容器。 最後に、 あの、 欠けた、 マグカップ。 新聞紙で、 丁寧に、 包んで。

部屋は、 また、 がらんどうに、 戻りました。 いや、 来た時よりも、 もっと、 空っぽに、 なった。 私は、 部屋の、 真ん中に、 立ち、 深く、 一礼しました。 「巷裏荘(こうりそう)、 103号室」 へ。 25年前の、 健二へ。 そして、 25年間、 この、 真実を、 守り続けてくれた、 この、 「壁」 へ。 「ありがとう。 さようなら」

私は、 ドアの、 鍵を、 静かに、 閉めました。 カチャリ、 という、 軽い音。 一つの、 時代が、 終わった、 音でした。

アパートの、 階段を、 ギシ、 ギシ、 と、 下りる。 もう、 この音も、 怖くない。 商店街は、 まだ、 眠っていました。 薄暗い、 空の下、 私は、 一人、 歩き出しました。

どこへ、 向かうのか。 決まっていました。 あの、 光の、 差し込む、 完璧な、 ギャラリーが、 併設された、 私の、 「工房」 へ。

でも、 私は、 もう、 あの、 「陶芸家・佐藤由美」 では、 ありませんでした。 私は、 ただの、 「由美」。 一人の、 男の、 人生を、 背負ってしまった、 女。 そして、 これから、 その、 重すぎる、 愛に、 「形」 を、 与えなければならない、 一人の、 職人。

足が、 重い。 バッグが、 肩に、 食い込む。 でも、 一歩、 一歩、 踏みしめる、 アスファルトの、 感触は、 確かでした。 夜明けの、 冷たい、 空気が、 私の、 頬を、 打ちました。 それが、 まるで、 健二の、 「しっかりしろ」 という、 最後の、 励ましの、 ように、 感じられました。

工房の、 ドアの、 前に、 着いたのは、 太陽が、 昇り、 始める、 直前でした。 私は、 鍵を、 差し込み、 重い、 鉄の、 扉を、 開けました。 ひんやりとした、 土の、 匂い。 私の、 「戦場」 であり、 「聖域」。 私は、 その、 暗闇の、 中で、 電気も、 つけずに、 立ち尽くしました。 私の、 本当の、 仕事が、 今、 ここから、 始まる。

[Word Count: 2840]

HỒI 2 – PHẦN 4

私は、 電気を、 つけませんでした。 窓から、 差し込む、 夜明けの、 わずかな、 光だけが、 工房の、 広い、 空間を、 ぼんやりと、 照らしている。 その、 光の中で、 私は、 静かに、 土の、 前に、 座りました。

土は、 冷たい。 粘土を、 触るのは、 何ヶ月ぶりだろう。 この、 土に、 触れるたび、 私は、 自分が、 「特別」 な、 存在だと、 思っていた。 でも、 違った。 この、 土に、 触れる、 「機会」 を、 与えてくれたのは、 健二の、 汗だった。

私は、 ろくろを、 回しませんでした。 今、 私が、 作るべきなのは、 機械が、 生み出すような、 完璧な、 曲線、 ではない。 手の、 痕跡。 人間の、 不器用な、 営み。 そして、 「傷跡」 の、 美しさ。

私は、 その、 冷たい、 土の塊を、 両手で、 取りました。 水も、 加えません。 ただ、 ひたすら、 その、 土を、 捏(こ)ねる。 固い。 まるで、 コンクリートの、 よう。 力を、 入れても、 なかなか、 形を、 変えない。 私の、 指紋が、 深く、 深く、 土に、 刻まれていく。

その、 手のひらの、 感触を、 感じながら、 私は、 あの、 手帳を、 思い出していました。 建設現場で、 日雇いの、 労働を、 する、 彼の、 手。 コンビニで、 夜勤を、 する、 彼の、 疲れた、 背中。 そして、 あの、 壁の、 亀裂を、 不器用に、 塞(ふさ)いだ、 彼の、 指。

私の、 手の、 動きが、 止まった。 私は、 土の、 塊を、 そっと、 テーブルに、 置きました。 そして、 バッグから、 あの、 「宝物」 たちを、 取り出しました。 黒い、 手帳。 ギターピック。 そして、 三つの、 空の、 カップラーメンの、 容器。

私は、 まず、 その、 三つの、 容器を、 見つめました。 これを、 模(かたど)ろう。 彼が、 25年前に、 一人で、 すすった、 「愛の、 証し」 の、 形を。

私は、 ろくろ、 ではなく、 紐(ひも)づくり、 という、 原始的な、 技法で、 形を、 作り始めました。 土を、 紐状(ひもじょう)に、 伸ばし、 それを、 一つ、 一つ、 積み上げていく。 それは、 時間が、 かかり、 不均一で、 歪(ゆが)な、 形に、 なりやすい、 技法。 でも、 それが、 良かった。 彼が、 私を、 支えてくれた、 道のりも、 きっと、 不均一で、 歪な、 ものだったに、 違いないから。

私は、 自分の、 手で、 三つの、 小さな、 「器」 を、 作り上げました。 それは、 カップラーメンの、 容器に、 そっくり、 だった。 でも、 陶器だから、 もっと、 重い。 そして、 プラスチックでは、 表現できない、 手の、 温もりが、 そこには、 ありました。 私は、 その、 三つの、 器を、 じっと、 見つめました。 一つは、 彼に。 一つは、 私に。 一つは、 春に。 三人が、 それぞれの、 孤独を、 抱えながらも、 同じ、 ものを、 分かち合った、 「あの夜」 の、 記録。

それから、 私は、 もう一つ、 全く、 違う、 ものに、 取り掛かりました。 小さな、 茶碗。 飯碗(めしわん)です。 これも、 ろくろは、 使いません。 手びねり。 手のひらで、 そっと、 土を、 叩き、 少しずつ、 広げていく。

形は、 シンプル。 何の、 装飾も、 ない。 ただ、 ご飯を、 食べるための、 器。 私は、 その、 茶碗の、 底に、 指で、 小さな、 「傷」 を、 つけました。 細い、 一本の、 亀裂。 それは、 あの、 壁の、 亀裂と、 同じ、 長さ。 そして、 その、 傷跡の、 上を、 少し、 盛り上がった、 パテのような、 土で、 不器用に、 覆(おお)う。

私は、 この、 茶碗を、 「壁の、 亀裂(きれつ)」 と、 名付けよう、 と、 決めました。 この、 不器用で、 でも、 頑丈な、 傷跡こそが、 健二の、 真実の、 愛の、 象徴だから。 この、 茶碗で、 彼に、 ご飯を、 食べて、 もらおう。 もう、 カップラーメン、 ではなく。

それから、 数ヶ月が、 過ぎました。 私は、 一切、 人前に、 出ませんでした。 ギャラリーからの、 問い合わせも、 すべて、 無視した。 私は、 ただ、 工房に、 籠(こも)り、 制作に、 打ち込みました。

私が、 作ったのは、 それらの、 器、 だけでした。 「壁の、 亀裂」 と、 名付けた、 飯碗。 そして、 「三つの、 容器」 と、 名付けた、 湯呑み、 のような、 器。 どちらも、 釉薬(ゆうやく)は、 かけませんでした。 素焼きに近い、 土の、 肌合い。 不器用で、 素朴。 でも、 重い、 真実が、 詰まっている。

窯(かま)を、 焚(た)く。 火を、 入れる。 あの、 頃の、 健二の、 情熱を、 思い出しながら。 彼の、 魂を、 この、 土に、 焼き付けたい、 と、 思いながら。

そして、 私は、 決意しました。 この、 「作品」 を、 展示しよう。 「陶芸家・佐藤由美」 の、 新作展として、 ではなく。 「佐藤由美の、 告白」 として。

私は、 あの、 ギャラリーの、 オーナーに、 連絡を取りました。 「新作展を、 開きたい。 ただし、 条件が、 ある。 展示物は、 すべて、 私が、 作った、 日常の、 器。 そして、 一切、 値段は、 つけない」

オーナーは、 驚きましたが、 私の、 ただならぬ、 気迫に、 押され、 承諾してくれました。

展覧会当日。 会場は、 静かでした。 真っ白な、 台の上に、 並べられた、 器たち。 三つの、 「容器」 と、 たくさんの、 「壁の、 亀裂」 の、 飯碗。 いずれも、 素朴で、 不格好。 私が、 これまでに、 作ってきた、 華やかな、 作品群とは、 まるで、 違っていた。

そして、 その、 展示品の、 横に、 私は、 小さな、 プレートを、 置きました。 そこには、 あの、 手帳の、 最後の、 一節が、 書かれていました。 ただし、 匿名で。

「…俺が、 支えてきた、 なんて、 絶対に、 知られちゃ、 いけない。 それは、 お前の、 翼を、 重くする、 だけだから」

会場に、 人が、 集まり始めました。 有名な、 批評家たち。 コレクターたち。 彼らは、 戸惑っていました。 「これは… 佐藤由美の、 作品なのか?」 「まるで、 子供の、 手びねりの、 よう」 「これは、 何かの、 皮肉なのか」

その、 ざわめきの中で、 私は、 ただ、 静かに、 立っていました。 もう、 名声も、 評価も、 どうでも、 良かった。 これは、 私と、 健二、 そして、 春の、 間の、 儀式。

その時、 会場の、 入り口が、 ざわめきました。 現れたのは、 春でした。 彼は、 制服姿。 そして、 その、 隣には、 健二が、 立っていました。 健二は、 薄い、 グレーの、 コート姿。 彼が、 公の、 場に、 来るのは、 初めてでした。

春が、 私に、 気づき、 小さく、 うなずく。 そして、 健二を、 促し、 展示品の、 前へ、 連れていきました。 健二は、 会場の、 喧騒(けんそう)にも、 気づかず、 まっすぐ、 白い、 台の、 上の、 器たちを、 見つめていました。

三つの、 「容器」。 そして、 「壁の、 亀裂」 の、 飯碗。 彼は、 その、 不格好な、 茶碗を、 手に取りました。 裏返し、 底を、 見る。 そこには、 私の、 指で、 つけられた、 小さな、 傷跡が、 ありました。 そして、 それを、 覆う、 不器用な、 パテの、 跡。 25年前に、 彼が、 この、 手で、 作った、 あの、 壁の、 傷と、 全く、 同じ。

健二の、 手が、 かすかに、 震えました。 彼は、 ゆっくりと、 顔を上げ、 私を、 見ました。 私たちは、 目が、 合いました。 20年間、 見ようと、 しなかった、 お互いの、 目を、 真正面から。

彼の、 目には、 涙が、 浮かんでいました。 でも、 それは、 悲しみの、 涙では、 なかった。 安堵(あんど)と、 そして、 深い、 理解。 彼は、 全てを、 分かってくれた。 私が、 あの、 手帳を、 読み、 そして、 あの、 部屋で、 彼の、 真実を、 受け取った、 ことを。

彼は、 何も、 言いませんでした。 ただ、 その、 飯碗を、 両手で、 そっと、 抱きかかえるように、 持っていました。 そして、 静かに、 うなずきました。 その、 うなずきは、 私の、 「告白」 への、 「許し」 であり、 そして、 彼の、 「愛の、 受け渡し」 の、 完了を、 意味していました。

春が、 その、 横で、 微笑んでいる。 その、 微笑みは、 何も、 言いませんでしたが、 私には、 分かった。 「母さん、 これで、 いいんだよ」 と、 言っている。 彼は、 この、 すべてを、 知っていて、 私たちを、 この、 場所に、 導いた、 「建築家」 でした。

展覧会は、 静かに、 終わりました。 誰も、 その、 器を、 買おうとは、 しませんでした。 なぜなら、 それらは、 売り物、 では、 なかったから。 それは、 二人の、 人間の、 魂の、 記録。

数日後。 私は、 あの、 古い、 アパートの、 前へ、 再び、 立っていました。 「巷裏荘、 103号室」 の、 前。 私は、 大家さんに、 連絡を、 取り、 部屋を、 借り直すことに、 したのです。

大家さんは、 怪訝(けげん)な、 顔を、 しましたが、 「好きなように、 使っていい」 と、 言ってくれた。 私は、 鍵を、 開け、 部屋に、 入りました。 がらんどうの、 部屋。 壁の、 亀裂は、 そのまま、 そこに、 ありました。

私は、 その、 部屋を、 改装する、 ことは、 しませんでした。 ただ、 小さな、 テーブルと、 布団を、 持ち込んだ。 そして、 あの、 「壁の、 亀裂」 の、 飯碗を、 一つ、 テーブルの上に、 置きました。

その、 夜。 私は、 一人、 その、 飯碗に、 ご飯を、 よそい、 大根の、 味噌汁を、 飲みました。 ご飯は、 熱い。 味噌汁は、 優しい。 もう、 孤独では、 なかった。 この、 壁が、 健二の、 愛の、 証(あかし)として、 私を、 見守って、 くれている、 から。

そして、 翌朝。 私は、 工房に、 戻り、 再び、 土に、 向かいました。 もう、 私は、 陶芸家、 佐藤由美、 ではない。 私は、 愛の、 「傷跡」 を、 形に、 変える、 「職人」。 私が、 これから、 作る、 すべての、 器は、 あの、 壁の、 亀裂の、 ように、 不格好で、 でも、 温かく、 そして、 誰かを、 支えるための、 飯碗に、 なるだろう。

その、 後の、 私たち? 健二と、 私は、 再婚、 は、 していません。 私たちは、 もう、 「夫婦」 という、 枠に、 収まる、 必要が、 なかった。 愛の、 形は、 一つ、 ではないから。 でも、 春の、 週末。 健二は、 あの、 古い、 アパートに、 来ます。 私たちは、 あの、 狭い、 部屋で、 三人、 並んで、 私が、 手びねりで、 作った、 「壁の、 亀裂」 の、 飯碗で、 ご飯を、 食べる。 から揚げの日も、 あれば、 大根の、 味噌汁の、 日も、 ある。 そして、 時々、 あの、 三つの、 「容器」 で、 インスタントの、 しょうゆ味を、 すする。 その、 瞬間。 私たちは、 最も、 深く、 繋がっている。 愛は、 消えなかった。 ただ、 その、 形を、 変えただけ。 それは、 華やかな、 花、 ではなく。 壁の、 奥に、 隠された、 不器用で、 頑丈な、 「傷跡」 のように。 ずっと、 ずっと、 私たちを、 守り、 続けている。 私は、 今、 この、 古い、 アパートで、 静かに、 微笑んでいます。 人生は、 完璧では、 ない。 でも、 不器用な、 愛は、 永遠だ。 それを、 教えてくれた、 彼に、 心から、 感謝しながら。

[Word Count: 3183]


[Tổng số từ toàn bộ kịch bản: 19182]

Hồi 3 – Phần 3

私は、 あの古いアパートを、 後にしました。 しかし、 その部屋での、 「発見」と「慟哭(どうこく)」は、 私の、 内側で、 激しく、 燃え続けていました。 あれは、 単なる、 離婚後の、 一時の、 避難所では、 なかった。 健二の、 魂が、 25年間、 私に、 語りかけるのを、 待っていた、 「聖地」 だったのです。

工房に、 戻った、 私は、 すぐに、 制作に、 取り掛かる、 ことが、 できませんでした。 まず、 やらなければ、 ならない、 ことが、 あった。 それは、 私の、 過去の、 「清算」 です。

私は、 これまで、 作り、 そして、 高価な、 値段で、 売ってきた、 作品たちを、 一つ、 一つ、 見つめ直しました。 鮮やかな、 釉薬(ゆうやく)。 完璧な、 曲線。 細部にまで、 こだわった、 装飾。 それらは、 すべて、 「芸術家・佐藤由美」 という、 偶像を、 飾るための、 鎧(よろい)でした。 そして、 その、 鎧の、 裏地は、 健二の、 犠牲の、 血で、 染まっていた。

私は、 それらの、 作品を、 叩き割る、 ような、 ことは、 しませんでした。 それは、 健二の、 努力そのものを、 否定することに、 なるから。 でも、 私は、 もう、 それらの、 作品を、 自分の、 「代表作」 として、 愛することは、 できませんでした。 彼らの、 上に、 かかっている、 光は、 偽物だと、 知ってしまったから。

私は、 工房の、 奥の、 暗い、 棚に、 それらの、 作品を、 丁寧に、 しまいました。 二度と、 日の目を、 見ることが、 ないように。 そして、 その、 空いた、 空間に、 私が、 今、 持ち帰ってきた、 「宝物」 を、 並べました。 黒い、 手帳。 ギターピック。 三つの、 空の、 カップラーメンの、 容器。 そして、 あの、 欠けた、 マグカップ。 その、 マグカップだけが、 この、 工房の中で、 異様な、 存在感を、 放っていました。

それから、 私は、 いよいよ、 土に、 向かいました。 あの、 手帳を、 テーブルの、 隅に、 置き、 ページの、 言葉を、 反芻(はんすう)しながら。 「建設現場の、 日雇い」「コンビニの、 夜勤」「寝る、 時間は、 なくなるが」 その、 文字を、 エネルギーに、 変えて。

私は、 最初に、 あの、 壁の、 亀裂と、 全く、 同じ、 傷跡を、 持つ、 「飯碗(めしわん)」 の、 制作に、 没頭しました。 私は、 通常の、 ろくろを、 使いませんでした。 手のひらを、 使った、 手びねり。 指の、 痕跡が、 そのまま、 残るように。 この、 不格好さこそが、 健二の、 愛の、 「真実」 を、 伝える、 唯一の、 言語だと、 知っていたから。

土の、 種類も、 変えました。 以前は、 白く、 きめ細やかな、 磁器土を、 好んでいた。 しかし、 今回は、 鉄分を、 多く含む、 荒い、 土を、 選びました。 それは、 まるで、 健二が、 建設現場で、 触れていた、 土や、 砂利の、 よう。 その、 荒々しい、 感触を、 手のひらで、 捏(こ)ねるたびに、 私は、 彼の、 疲労と、 彼の、 体温を、 感じていました。

釉薬(ゆうやく)は、 一切、 使いません。 健二が、 補修した、 パテの、 色を、 表現するために、 ごく、 わずかな、 天然の、 灰釉(かいゆう)を、 部分的に、 薄く、 塗りつける、 だけに、 留(とど)めました。 そして、 本焼き。 窯(かま)の、 火は、 私の、 「怒り」 であり、 「後悔」 であり、 そして、 「愛」 でした。

窯から、 取り出した、 飯碗は、 私が、 今まで、 作ってきた、 何よりも、 美しかった。 それは、 完璧では、 なかった。 縁は、 少し、 歪んでいる。 高台(こうだい)は、 不均一。 でも、 荒い、 土の、 温もりと、 小さな、 「傷跡」 が、 圧倒的な、 「生命感」 を、 放っていました。 まるで、 生きている、 かのように。

その、 飯碗の、 制作を、 終えた後、 私は、 三つの、 カップラーメンの、 容器を、 模した、 「三つの、 容器」 の、 湯呑(ゆのみ)の、 ような、 器の、 制作に、 取り掛かりました。 これも、 もちろん、 手びねり。 その、 不格好な、 器の、 内側に、 私は、 自分の、 指の、 跡を、 深く、 刻みつけました。

そして、 これらの、 器を、 中心に、 私は、 小さな、 「コレクション」 を、 作り上げました。 すべて、 日常の、 器。 茶碗、 小皿、 湯呑み、 そして、 酒器。 すべて、 荒い、 土を、 使い、 「不完全な、 美」 を、 追求しました。

私は、 この、 コレクションに、 「Kabe no Kiretsu」(壁の亀裂) という、 名前を、 つけました。 私の、 成功を、 支えてくれた、 最も、 不器用で、 最も、 強靭な、 「基礎」 への、 オマージュとして。

数ヶ月後。 私は、 あの、 ギャラリーの、 オーナーに、 連絡を、 取りました。 彼は、 私の、 突然の、 「引退」 からの、 復活に、 驚いていました。 「佐藤さん、 あなたから、 連絡があるとは。 新作は?」 「ええ。 あります。 そして、 展示会の、 条件が、 あります」

私は、 あの、 厳しい、 条件を、 提示しました。 展示物は、 すべて、 日常の、 器。 そして、 一切、 値段は、 つけない、 こと。 オーナーは、 困惑しました。 「しかし、 佐藤さん。 それでは、 ビジネスに、 なりません。 あなたの、 作品は、 すべて、 何十万、 という…」 「これが、 私の、 すべてです。 売るための、 作品では、 ありません。 これは、 私自身の、 『魂の、 記録』 です。 もし、 この、 条件が、 飲めなければ、 結構です」

私の、 決然とした、 態度に、 オーナーは、 最後は、 折れました。 「分かりました。 あなたの、 キャリアを、 信じます。 しかし、 一体、 何を、 意図して…」 「来て、 見れば、 分かります」

展覧会当日。 ギャラリーは、 異様な、 空気に、 包まれていました。 真っ白な、 空間に、 並べられた、 土の、 塊のような、 器たち。 そして、 最も、 目立つ、 場所に、 置かれた、 三つの、 「容器」。

批評家たちは、 ざわめきました。 「これは、 衝撃だ」 「佐藤由美の、 退行か?」 「いや、 待て。 この、 不器用さ、 この、 荒い、 土の、 手触り。 尋常では、 ない、 『力』 を感じる」

私は、 会場の、 隅に、 立っていました。 誰も、 私の、 目には、 入らない。 私は、 ただ、 あの、 「壁の、 亀裂」 の、 飯碗を、 見つめていました。

そして、 私は、 あの、 小さな、 プレートを、 壁に、 貼りました。 手帳の、 最後の、 一節。

「…俺が、 支えてきた、 なんて、 絶対に、 知られちゃ、 いけない。 それは、 お前の、 翼を、 重くする、 だけだから」

その、 一文が、 貼られた、 瞬間。 会場の、 空気が、 一変しました。 批評家も、 コレクターも、 皆、 その、 短い、 言葉に、 吸い寄せられた。 彼らは、 その、 言葉を、 読み、 そして、 再び、 あの、 荒い、 飯碗に、 目を、 向けました。

「これは… 誰かの、 告白だ」 「この、 不器用な、 器は、 その、 『支え』 の、 形を、 表しているのか」 ある、 有名な、 批評家が、 飯碗を、 手に取り、 底の、 傷跡に、 触れました。 「この、 亀裂と、 補修跡… これは、 愛だ。 そして、 罪の、 意識だ。 完璧な、 ものに、 なろうとした、 人間が、 初めて、 認めた、 『不完全な、 人間性』」

その、 批評家の、 言葉は、 私には、 もう、 届きませんでした。 私の、 視線は、 入り口に、 固定されていたから。

春と、 健二が、 入ってきました。 春は、 あの、 手帳を、 知っている。 だから、 彼は、 この、 会場が、 「聖域」 である、 ことを、 知っていた。 彼は、 健二を、 まっすぐ、 展示台の、 前へ、 連れていきました。

健二の、 目は、 もう、 最初から、 私の、 新作を、 見つめていました。 彼は、 あの、 「壁の、 亀裂」 の、 飯碗を、 手に取りました。 彼は、 私のように、 涙を、 流したりは、 しませんでした。 彼の、 顔は、 深い、 疲労の、 代わりに、 深い、 静寂に、 満たされていました。 彼は、 底の、 傷跡に、 触れました。 そして、 ゆっくりと、 目を、 閉じました。

彼は、 そこで、 25年前の、 自分と、 再会したのでしょう。 あの、 冷たい、 アパートで、 一人、 カップラーメンを、 すすりながら、 私を、 守ろうと、 誓った、 若き日の、 自分と。 そして、 彼は、 その、 飯碗を、 そっと、 胸に、 抱きしめました。 それは、 彼自身の、 「救済」 の、 行為でした。 彼は、 彼の、 犠牲が、 無駄では、 なかった、 ことを、 知った。 そして、 私が、 その、 重荷を、 受け取った、 ことを。

彼は、 ゆっくりと、 私に、 歩み寄りました。 会場の、 誰もが、 私たち、 二人から、 目を、 離せなかった。 彼は、 私に、 向かって、 何も、 言いません。 ただ、 静かに、 私と、 目を、 合わせ、 深く、 深く、 頭を、 下げました。 その、 一瞬。 私の、 25年間の、 「罪」 は、 許されたのです。

私は、 泣きませんでした。 ただ、 静かに、 うなずき、 彼に、 答えました。 私の、 手は、 もう、 ろくろを、 回す、 手、 だけでは、 ありませんでした。 それは、 人を、 愛し、 人を、 支え、 そして、 「傷跡」 を、 受け入れる、 ことができる、 人間の、 手でした。

[Word Count: 3373]

TÓM TẮT TIẾNG VIỆT

BƯỚC 1: LẬP DÀN Ý CHI TIẾT (Tiếng Việt)

  • Chủ đề: Phòng Trọ Cũ Cuối Phố (巷裏の古いアパート)
  • Ngôi kể: Ngôi thứ nhất – “Tôi” – là Satō Yumi (45 tuổi).
  • Thông điệp: Đôi khi chúng ta quên mất rằng thành công của hiện tại được xây dựng từ sự hy sinh thầm lặng của người khác. Khi tình yêu biến mất, thứ còn lại không phải là thù hận, mà là sự thấu hiểu muộn màng.

Nhân vật:

  • Satō Yumi (Tôi): 45 tuổi, nghệ nhân gốm sứ thành danh. Tự tin, có chút kiêu hãnh, nhưng đang tổn thương. Cô là người chủ động ly hôn vì cảm thấy chồng (Kenji) đã trở nên lạnh lùng, xa cách, chỉ biết đến công việc.
  • Takeda Kenji: 46 tuổi, chồng cũ của Yumi. Quản lý cấp trung trong một công ty thương mại. Im lặng, khắc khổ, mệt mỏi. Anh đồng ý ly hôn quá dễ dàng.
  • Takeda Haru: 16 tuổi, con trai. Trầm lặng, yêu thương cả bố và mẹ, cảm thấy bất lực và biết nhiều hơn những gì anh ta nói.

Hồi 1 (~8.000 từ) – Khởi đầu & Thiết Lập (Sự Vỡ Vụn)

  • Warm Open: “Tôi” (Yumi) đang ở trong xưởng gốm của mình. Mọi thứ hoàn hảo, ánh sáng đẹp, các tác phẩm được đánh giá cao. Nhưng cô vừa ký đơn ly hôn. Cô gói ghém đồ đạc cá nhân, chỉ giữ lại một chiếc cốc gốm bị mẻ (chi tiết “seed”) mà cô làm khi mới học nghề.
  • Thiết lập (Căn phòng): Cô không về nhà bố mẹ, cũng không thuê căn hộ đắt tiền. Cô cố ý chọn một căn phòng trọ cũ kỹ, giá rẻ ở cuối một con phố nhỏ. Đó là một hành động “tự trừng phạt” hoặc “tìm về nguyên thủy” mà chính cô cũng không hiểu rõ.
  • Vấn đề: Căn phòng nhỏ, tường mỏng. Cô nghe thấy tiếng cãi vã, tiếng cười của hàng xóm. Sự tương phản gay gắt với cuộc sống sung túc trước đây. Cô cảm thấy cô đơn, nhưng cũng có một sự nhẹ nhõm kỳ lạ.
  • Gieo mầm (Seed): Con trai Haru đến thăm, mang theo một thùng đồ cũ. Haru hỏi: “Mẹ, sao mẹ lại chọn nơi này? Nó giống hệt… à mà thôi.” (Haru suýt nói ra điều gì đó nhưng lại thôi).
  • Hành động: Yumi cố gắng dọn dẹp, biến căn phòng thành “không gian của mình”. Cô tìm thấy một vết nứt trên tường mà ai đó đã cố gắng vá lại bằng một loại xi măng khác màu (chi tiết “seed” quan trọng).
  • Kết Hồi 1 (Quyết định): Kenji (chồng cũ) nhắn tin: “Anh sẽ đưa Haru qua. Có chuyện cần nói.” Yumi thấy tim mình đập mạnh. Cô sợ hãi, nhưng cũng mong chờ. Cô nhận ra mình vẫn còn quan tâm.

Hồi 2 (~12.000–13.000 từ) – Cao Trào & Đổ Vỡ (Sự Thật Bị Che Giấu)

  • Sự kiện chính (Core Scene): Kenji và Haru đến. Căn phòng quá nhỏ cho ba người. Sự ngột ngạt hiện hữu. Haru mang theo mì gói. “Bố nói mẹ có thể chưa mua đồ ăn.”
  • Hành động: Họ nấu mì. Không ai nói gì. Họ ngồi ăn trong im lặng. “Tôi” (Yumi) nhìn Kenji – người đàn ông mệt mỏi, tóc bạc đi nhiều. Cô muốn hỏi “Tại sao anh lại đồng ý ly hôn dễ dàng như vậy?”, nhưng không thể. Cô nhìn anh, anh nhìn cô. (Cảnh “nhận ra có những thứ mất đi mãi mãi” diễn ra ở đây).
  • Sau khi họ rời đi: Yumi cảm thấy tuyệt vọng. Căn phòng trở nên lạnh lẽo. Cô quyết định dọn dẹp kỹ hơn, vì cô không thể chịu đựng được “mùi của quá khứ”.
  • Twist giữa chừng (Khám phá): Khi cố gắng dịch chuyển cái tủ quần áo cũ kỹ mà chủ nhà để lại, Yumi phát hiện ra một khe hở. Dưới tấm lót sàn bị cong vênh, có một chiếc hộp kim loại nhỏ.
  • Mất mát (Nội tâm): Bên trong là một cuốn sổ tay cũ, vài đồng xu, và một chiếc phím đàn guitar cũ (thứ Kenji từng rất thích).
  • Cao trào cảm xúc (Đọc cuốn sổ): Yumi mở cuốn sổ. Đó là chữ viết tay của Kenji. Nhưng là của 25 năm trước. Anh ấy đã ghi lại những ngày tháng anh ấy sống ở chính căn phòng này.
  • Sự thật (The Reveal): Kenji đã làm 3 công việc (xây dựng, cửa hàng tiện lợi) để trả tiền học phí cho trường nghệ thuật (gốm sứ) của Yumi. Anh ấy đã ăn mì gói mỗi ngày. “Hôm nay Yumi có tác phẩm mới. Cô ấy thật rạng rỡ. Tôi mệt, nhưng nó xứng đáng.” Cuốn sổ dừng lại khi YUMI TỐT NGHIỆP.
  • Kết Hồi 2 (Đổ vỡ): Yumi sụp đổ. Cô nhận ra Haru đã biết (cậu bé đã thấy ảnh cũ của bố). Cô nhận ra sự lạnh lùng của Kenji không phải là hết yêu, mà là anh ấy đã “cho đi” quá nhiều đến mức không còn gì cho bản thân. Sự thành công của cô được xây dựng trên sự kiệt quệ của anh. Chiếc cốc mẻ cô giữ lại chính là chiếc cốc anh đã mua đất nung cho cô bằng tiền lương làm thêm đầu tiên.

Hồi 3 (~8.000 từ) – Giải Tỏa & Hồi Sinh (Sự Thấu Hiểu)

  • Catharsis (Sự giải tỏa): Yumi khóc, không phải vì mất mát, mà vì thấu hiểu. Cô nhìn lại vết nứt trên tường mà Kenji đã tự tay vá 25 năm trước. Cô chạm vào nó.
  • Hành động thay đổi: Yumi không cố gắng liên lạc với Kenji để “xin lỗi” (vì điều đó là vô nghĩa). Thay vào đó, cô bắt đầu một hành động khác. Cô đến xưởng gốm của mình.
  • Hành động cụ thể: Cô làm một bộ sưu tập mới. Không phải những tác phẩm hào nhoáng, mà là những chiếc bát (chawan) đơn giản, mộc mạc, dùng để ăn cơm, ăn mì. Cô đặt tên bộ sưu tập là “Kabe no Kiretsu” (Vết nứt trên tường).
  • Twist cuối cùng (Sự báo đáp): Vài tháng sau, cô tổ chức một buổi triển lãm nhỏ. Toàn bộ lợi nhuận, cô thông báo, sẽ được dùng làm học bổng cho các sinh viên nghệ thuật gặp khó khăn.
  • Kết tinh thần: Haru đến buổi triển lãm. Cậu bé nhìn Yumi. “Bố không đến. Nhưng bố nói, chiếc bát này rất đẹp.” Haru chỉ vào một chiếc bát đơn giản nhất.
  • Kết cuối cùng: Yumi đứng một mình trong căn phòng trọ cũ. Nó không còn lạnh lẽo. Cô đã dọn đi gần hết, chỉ để lại cuốn sổ tay của Kenji trên bàn. Cô khóa cửa. Căn phòng không phải là sự kết thúc, nó là sự khởi đầu của mọi thứ. Cô bước ra phố, mỉm cười trong lặng lẽ.

Tiêu đề & Mô tả (Tiếng Nhật)

🎬 Tiêu đề (インパクト重視)

25年越しの愛の告白:陶芸家の妻が知った、夫の「壁の亀裂」に隠された秘密【インスタントラーメンの誓い】 (Lời Tỏ Tình Sau 25 Năm: Người Vợ Nghệ Nhân Gốm Sứ Phát Hiện Bí Mật Ẩn Sau “Vết Nứt Trên Tường” Của Chồng [Lời Thề Mì Gói])


📝 Mô tả (Thu Hút & Thân Thiện SEO)

成功した陶芸家の由美は、冷めた夫・健二との離婚を選び、過去を清算するために古いアパートの一室に移り住む。

彼女がその六畳一間で直面したのは、夫と息子とのぎこちない「インスタントラーメンの夜」。そして、壁に走る不格好な亀裂だった。

健二が最後に渡した一通の古い手帳。そこに綴られていたのは、25年前、由美の夢のために健二が極貧の中で身を削り、この部屋で暮らしていたという衝撃の真実だった。

彼の冷たさは、愛の終わりではなく、全てを与え尽くした究極の献身だった。

由美が選んだ、謝罪ではない「答え」とは? 彼女は、その愛の「傷跡」を、自らの作品「壁の亀裂」として昇華させる。涙なしには見られない、大人のための感動の物語。

【この物語の見どころ】

  • 感情の深さとリアルな夫婦関係の崩壊
  • カップラーメンが象徴する、25年越しの夫婦の秘密
  • 感動の衝撃の結末 (Twist):愛の形は一つではない

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🎨 Prompt Ảnh Thumbnail (サムネイル プロンプト)

Prompt: Japanese style cinematic thumbnail. A melancholic, high-contrast, warm and cool tone split.

Main Subject: A close-up shot of a woman’s (Yumi, 45, wearing a simple sweater) trembling hand holding a worn, old, black notebook and a chipped white ceramic mug.

Background: The background is split between two scenes:

  1. Left (Cool Tone, Focus Blur): A blurry, dark, simple six-tatami-mat room wall with a visible, unevenly patched crack (亀裂) running vertically.
  2. Right (Warm Tone, Focus Blur): The blurry, rough hands of a man (Kenji) holding a cheap instant ramen cup with steam rising.

Visual Text (Impact): Place the bold Japanese text on the center-top: 「俺が支えてきたなんて、知られちゃいけない」 (I must never let her know I supported her).

Atmosphere: Deeply emotional, cinematic, and slightly dark, focusing on the texture of the old paper, the chipped mug, and the rough wall. The visual should scream “Hidden Truth” and “Sacrifice.”

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